出版社内容情報
大藪 春彦[オオヤブ ハルヒコ]
著・文・その他
内容説明
資本金15億の「東和油脂」経理部に勤める朝倉哲也は、上司の信頼が厚く、控え目で真面目な男。しかし、それは彼の壮大な野望を隠すための仮面に過ぎなかった―。浅黒く整った顔に人なつっこい瞳、鍛え上げた肉体を武器に、夜ごと特殊技術の習得と情報収集に励む朝倉。彼は私利を貪る上役たちに成り代わって会社を我が物にできるか。東京オリンピック直前の熱気あふれる東京を舞台にした、ハードボイルドアクション開幕!
著者等紹介
大藪春彦[オオヤブハルヒコ]
1935年ソウル生まれ。早稲田大学在学中に『野獣死すべし』を発表し、鮮烈なデビューを飾る。その後、日本におけるハードボイルド小説の先駆者として一時代を築いた。96年永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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森オサム
53
著者初読み。書かれたのは昭和37年から39年にかけてであり、前回の東京オリンピック前夜。主人公朝倉哲也は29歳、当時の大藪氏と同年代。自身を投影した物だとすると、何とも恐ろしい人物を作り上げたもんです。何度死刑になっても足りない程の悪党、何人殺すねん!。しかし昏い魅力を感じざるを得ない、これぞピカレスクハードボイルドか。余りにも古い時代ですが、高度経済成長期の貧富の差が背景となっていて、現代にも通じる面が有るのかも。しかし男が興味のある物は今も変わらないなぁ、自分の腕に填めたロレックスを見て思った(笑)。2019/04/20
カタコッタ
15
村川透監督『蘇える金狼』にはちょっとした思い出が有る。当時松田優作好きの友人に影響してされて初めて一人で映画館に入って観たのがこれだった。思った以上に面白かった。私には松田優作以上に風吹ジュンがカッコ良く、以来大ファンだ。衣装(芦田淳)も前野曜子が歌った主題歌も。映画館を出た後そのままデパートに入り映画でイカすと思った3本のボックスプリーツの入った白いスカートを買い、履いたまま帰宅した若かりし頃の思い出です。映画の内容をスッカリ忘れていて今回読んでみた。懐かし過ぎるほどの昭和があった。面白かった。2022/07/04
qwer0987
9
アンチヒーローによるハードボイルドである。それゆえにかなり癖が強い。ハードボイルド的と言えばそうなのだが、状況だけ説明して心情など書いてくれないので、朝倉が今どんな理由で行動しているのかつかみにくいときがある(徐々に事情が見えてくるとは言え)。またアンチヒーローらしく、人を殺すことにためらいを見せないため、引いてしまう場面もなくはない。しかし金を得るために手段を選ばずに行動する朝倉の存在感はやはり強烈で、物語を読み進めさせるけん引力がある。下巻も楽しみにしたい2024/11/30
コチ吉
9
朝倉の過去や背景など一切描かれず、ひたすら己の目的を果たすために淡々と突き進む。体重に貫、足のサイズに文という表現に、いつの時代の話なんだと思ったが、それだけ日本のハードボイルドの先駆けの証し。鳥もも足三本にレモンを丸齧り。うーん渋いと言うかなんと言うか。続けて完結編へ。2021/12/31
r2d2
6
普段は平凡なサラリーマンを装うが、その実は目的達成のためには手段を選ばない冷酷非情なアサシン、朝倉。巨大資本の乗っ取りを画策する。完結編へ続く。1979年に松田優作主演で映画化された。2024/03/10