出版社内容情報
芥川が命を絶った昭和2年の作品や評論、遺書「或旧友へ送る手紙」等を収録時代を先取りした「見えすぎる目」がもたらした悲劇。自らの末期を意識した凄絶な心象が描かれた遺稿「歯車」「或阿呆の一生」、最後の評論「西方の人」、箴言集「侏儒の言葉」ほか最晩年の作品を収録。
芥川 龍之介[アクタガワ リュウノスケ]
著・文・その他
内容説明
視界に半透明の歯車が回っている「僕」の美しくも奇怪な心象風景を綴った小説「歯車」。自らの一生を「月」「械」「剥製の白鳥」「敗北」など、五十一項目でモザイク的に表した「或阿呆の一生」。これらの遺稿のほか、「良心とは厳粛なる趣味である」など、短い警句の中に独特のユーモアと哀感が滲む芥川版箴言集「侏儒の言葉」、遺書「或旧友へ送る手記」など、三十五歳で自死を遂げるまでの最晩年の小説や評論を厳選収録。
著者等紹介
芥川龍之介[アクタガワリュウノスケ]
明治25(1892)年東京生まれ。東大在学中に豊島与志雄や菊池寛らと第三次「新思潮」を発刊。大正5(1916)年に発表した「鼻」が夏目漱石に激賞され、続く「芋粥」「手巾」も好評を博す。後年は、厭世的人生観に拠った作品を手がけ、また小説の「筋」をめぐり谷崎潤一郎との文学論争に至った。昭和2(1927)年、「ぼんやりした不安」から睡眠薬自殺(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
69
昭和の作品、芥川「晩年」の作品が収録された一冊。「或阿呆の一生」や「侏儒の言葉」といった名高い作品も収録されているが、個人的には「歯車」を始めとして「夢」や「凶」、「鵠沼雑記」といった当時の芥川の精神風景を映したような作品に興味を覚える。どの作品も荒涼で鬱々としていて、冬の海岸で荒れる海と曇り空を眺めているような心地もする。偶然が予兆に感じられる時って時々ありますよね。名高い「ぼんやりとした不安」で知られる「或旧友へ送る手記」を読むとあまりに冷静すぎると同時に、剃刀は切れすぎるが脆いという言葉を思い出す。2020/03/12
優希
54
芥川最晩年の短編集です。そのせいか、随所で陰鬱な空気を感じずにはいられませんでした。小説のみならず、箴言集、手紙などがおさめられているのは興味深いところです。2022/04/12
優希
47
芥川自殺直前の頃に書かれた作品なだけあり、自己嫌悪と希死観念を伺うことができます。この負の感情にひきつけられるんですよね。鬱にどっぷり浸かるのもまた心地良いものです。2023/03/20
ゲオルギオ・ハーン
26
芥川龍之介の最後期にあたる作品群をまとめた一冊。確かに陰鬱な印象が所々にありますが、理性的で洞察力は鋭く、鋭いだけではなく独特の世界観が『侏儒の言葉』『或阿呆の一生』『西方の人』で表現されていて、これまでなんだか引っ掛かっていた芥川先生の表現の裏を少し覗けたような気がしてなんだか気分がスッとしました。個人的には女っ気のない作品ばかりの印象があったので女性モデルとのやり取りがメインの『夢』は読んでいて驚きましたし、変な表現ですが芥川先生の人間味をようやく感じ取れた気がしました。2021/08/04
鍵ちゃん
16
視界に半透明の歯車が回っている「僕亅の美しくも奇怪な心象風景を綴った「歯車亅。自らの一生を月、械、剥製の白鳥、敗北など、51項目でモザイク的に表した「或阿呆の一生亅。これらの遺稿のほか、「良心とは厳粛なる趣味である亅など。短い警句の中に独特のユーモアと哀感が滲む「侏儒の言葉亅。遺書「或旧友へ送る手記亅など、35歳で自死を遂げるまでの最晩年の小説や評論を収録。晩年のため、暗くなる。2020/08/31
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