出版社内容情報
映画「楽園」原作の「犯罪小説集」に続き、
数多の賞を受賞する著者がライフワークとして挑む、傑作小説集第2弾
職を失い、年老いた母を抱えて途方に暮れる男。
一世を風靡しながら、転落した元アイドル。
道ならぬ恋に落ちた、教師と元教え子。
そして、極北の地で突如消息を絶った郵便配達員。
彼らが逃げた先に、安住の地はあるのか。
人生の断面を切り取る4つの物語。
内容説明
職を失い、年老いた母を抱えて途方に暮れる男。一世を風靡しながら、転落した元アイドル。道ならぬ恋に落ちた、教師と元教え子。そして、極北の地で突如消息を絶った郵便配達員。彼らが逃げた先に、安住の地はあるのか。人生の断面を切り取る4つの物語。
著者等紹介
吉田修一[ヨシダシュウイチ]
長崎県生まれ。1997年「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞し、デビュー。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で第127回芥川賞を受賞。07年『悪人』で第61回毎日出版文化賞と、第34回大佛次郎賞を受賞。10年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞、19年『国宝』で第69回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
340
吉田 修一は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。逃亡をテーマとした連作短編集、著者にしては薄目の本ですが、楽しめました。オススメは、酒井 法子を彷彿させる「逃げろお嬢さん」です。何十年も逃亡し続けるのは、本当に大変なことなんでしょうね。 2019/10/30
旅するランナー
216
”Everybody's got a hungry heart”というフレーズが思い浮かぶ、吉田修一小説を読むと。スプリングスティーン「Hungry Heart」。溜まり溜まった鬱憤が爆発する暴走男のシリアスさ、教師と高校生の許されぬ純愛の切なさ、元アイドルと長年のファンによるチグハグな滑稽さ、網走番外地郵便男失踪ののんびりさ...充たされない心を持ち、自分の人生から逃げたくなった人たちを描く4編。異なるメロディのような短編の中の、吉田修一が作り出す文章のリズムが好きだ。2019/11/11
hiro
192
題名から『犯罪小説集』に続くシリーズの作品だと気づく。読み始めると『悪人』の逃亡劇を思い出したが、4編の短編とも『犯罪小説集』や『悪人』ほど“凶悪犯罪”でもないためか緊張感は薄く、すらすらと読めた。しかし、なぜ一方通行無視の職務質問を受けただけで、大掛かりな事件に発展していくのかなど、歯止めが効かない怖さを各短編とも感じた。一方、元アイドルの行方不明事件が起き、偶然その元アイドルに出会ったファンの温泉宿の主人が、勝手な勘違いをしてやらかしてしまう行動には笑ってしまう。もちろん本シリーズの続編を期待する。2019/10/26
修一朗
188
吉田修一版黒い報告書,シリーズ第二段です。勝手にそう呼んでます。今回も実際にあった事件をモデルにしているのでしょうが「逃げろお嬢さん」以外は実事件は思い当たりませんでした。軽犯罪を扱っているので記憶に残っていないのですね。ふとしたことで階段を転げ落ちちゃったという思いと当事者の心情はきっとこんな感じなんだろうなぁと感じは「犯罪小説集」と同じです。少し軽めです。4編の中では「逃げろミスターポストマン」がお気に入り。2020/01/07
yoshida
170
犯罪小説集をライトにした印象。それぞれの事情で逃げる人々を描く短編四編。実際の事件がモデルにされていると思われる。「逃げろ九州男児」が吉田修一さんらしいと思う。連帯保証の借金を返し終わってからのリストラ。次の職も見つからず生活保護申請に行く。役所からの帰りに警察に交通違反で取り締まられ逃亡する。このやるせなさ。最後の同級生のまさかの行動に驚く。「逃げろミスター・ポストマン」は組織に属している人は気持ちが分かる内容と思う。同情は出来るが、実際には同じ行動は出来ない。読みやすいが私は犯罪小説集の方が好みかな。2020/01/03