感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
73
筒井康隆による人類絶滅もの。中国軍内部の殴り合いで誤発射された核から始まる核戦争、そんな中で起きるドタバタ騒動が中心。主人公目線からと各地で起きる騒動の二つの視点から物語は推移するが、圧倒的に面白いのは後者。静謐に最後を迎えるなどという他の絶滅小説に見られるような諦念は欠片も見られず、どの人もどの人も見苦しく他人を押しのけ最後まで生きあがこうとしている。それでもそれが不快でないのは著者の人類観が感じられるからか。でも飛行機のシーンとか南極観測船のシーンとかは往年の著者を彷彿させ、ちょっと嬉しくなるなあ。2023/08/29
zeroset
1
なんと山陰・今井書店限定で復刊。自分が初めて読んだのは講談社文庫版だった。30数年ぶりの再読。2018/07/29
彗星讃歌
0
バカな人類がバカな理由でバカな戦争を始める。世界中が核の炎で消し炭になる中、パニックになった人々は我先に逃げようとし、そして尽く失敗する。そんな中、主人公は常に理性的に行動し、結果的に最も幸せな結末を迎える。極限状態を媒介にして人類への失望や人間が持つ動物性の開示、そしてそれらの中に一際輝く人間性、そして人類への愛が伝わってくる。今の時代では、この本は万人受けはしないだろうし批判も多いだろう。しかし核戦争の危機が迫り、人類への信頼が失われつつある今の時代だからこそ読まれるべき1冊である。2023/02/04