出版社内容情報
宿命の生地・津軽への思いを素直に綴った、著者中期の傑作名紀行文昭和19年、風土記の執筆を依頼された太宰は三週間にわたって津軽半島を一周した。自己を見つめ、宿命の生地への思いを素直に綴り上げた紀行文であり、著者最高傑作とも言われる感動の一冊。
太宰 治[ダザイ オサム]
著・文・その他
内容説明
昭和十九年五月、津軽風土記の執筆依頼を受けた太宰は、三週間かけて津軽地方を一周した。生家と義絶して以来、帰るのを憚っていた故郷―。懐かしい風土と素朴な人柄に触れ、自らにも流れる津軽人気質を発見する旅は、「忘れ得ぬ人たち」との交歓の日々でもあった。やがて、旅の最後に、子守・たけと三十年ぶりに再会を果たし…。自己を見つめ直し、宿命の地・津軽への思いを素直に綴った名紀行文。
目次
序編
本編(巡礼;蟹田;外ヶ浜;津軽平野;西海岸)
著者等紹介
太宰治[ダザイオサム]
1909年、青森県金木村(現五所川原市)生まれ。東京大学仏文科在学中に非合法運動に従事するもやがて転向、本格的な執筆活動に入る。35年「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。39年に結婚し「富嶽百景」「女生徒」「ろまん燈籠」など多くの佳作を執筆。戦後、『斜陽』でベストセラー作家になるが、「人間失格」を発表した48年に玉川上水で入水自殺をはかり死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rico
70
ああ、いいなあ。すーっと浸み込んでいくような感じ。太宰読んでこんな気持ちになったのは初めて。津軽の風景と歴史、懐かしい人たちとの交流。手描きの地図を見返しながらその旅程を追う。酔っぱらって調子に乗って顰蹙を買う友への太宰の眼差しは優しいし、タケを初め迎えてくれる人たちは皆暖かい。ユーモラスなやりとりに何度も吹き出してしまった。気にかけてくれる人がこんなにいて、そこに素直に身も心をゆだねている太宰は少年のよう。ほどなく心中で命を断ってしまうなんて想像もできない。彼の孤独はそれほど深いのか、単なる気まぐれか。2019/05/23
HANA
69
再読。初めてこの本を読んだのは東北旅行、津軽を旅している途中であった。その時は弘前城と金木の斜陽館を訪ねただけであったが、本書を読んでいるとその時に仰ぎ見た岩木山や立ち並ぶ林檎の木をありありと思い出す事が出来る。内容は太宰治の故郷津軽半島を一周した記録であるが、故郷に対する感情、愛憎や悲喜こもごもが文中から漂ってくる気がする。とはいえ友達との交流はひたすら楽しそうで、太宰の鬱々とした印象が一変しそうな感じさえする。そしてラストの再開。読んでいると、あの津軽の地をもう一度訪れたい衝動にしばしば襲われるなあ。2020/03/04
Nao Funasoko
47
『走れメロス』は中学生の頃に読んだ記憶がある。確か愛人!?と入水自殺した。太宰について持っている知識はそのぐらいだ。さて、その太宰だが、このルーツをたどる紀行文を本当に自分の気持ちに正直に書いているのだとしたら、彼は小心者でイジイジした性格でファッションセンスは皆無で酒飲みでオタクな男だけれどもなんとなく優しいところもある人物だったんだなとちょっと興味沸いてきた。青森の三内丸山遺跡にはいつか行ってみたいと思っているのだが、その折には太宰の足跡を追ってみるのも一興かもしれないな。 2019/02/20
優希
46
津軽の紀行文が生き生きと描かれていて面白かったです。懐かしい風土と素朴な人々から、自らにも津軽人気質があると発見した旅だと思いました。太宰のルーツに出会えたような気がします。だからこそ再開できた人がいる。最後の一文に心が熱くなりました。2025/01/07
あきぽん
41
カドフェス2018より。夏の文庫本フェアは古典を読む絶好のチャンスなので、まずは没後70年の太宰の未読本をセレクト。本書は昭和19年、30代の太宰が故郷の津軽を旅した時の紀行文。太宰といえば世間一般にはドラッグとセックスに溺れた暗い人、のイメージがあるけれど、ちゃんと向き合って読んでみると「優しく爽やか」な人柄が浮かび上がってくる。太宰が、男にも女にもモテモテだったのが腑に落ちる。私も、実際に太宰に会ったら惚れたかも?2018/07/08
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