出版社内容情報
著者晩年の代表作著者がライフワークとしていた「敵討ち」。物語として美化されてきたものを史実に則って描き直し、厳選した晩年の代表作。未収録だった50年ぶりの新作『日本敵討ち集成』と同時刊行!
長谷川 伸[ハセガワ シン]
著・文・その他
内容説明
享保9(1724)年、備中玉島の近く船尾村で、浅野平右衛門の末弟で茂七郎という若者の死体が見つかった。犯人は商家上成屋の倅、与市だという。やがて与市は自首し、公事方の調べの上、処刑された。だが数年後、江戸に下っていた長弟の安左衛門に驚愕の手紙が届く。与市と思われた死体は換え玉で、高野山で僧として生きているというのだ…。(「燈籠堂の僧」)日本の敵討ちに美学を見出した著者、最晩年の代表傑作!
著者等紹介
長谷川伸[ハセガワシン]
1884年、神奈川県横浜市生まれ。1963年、没。小学校を中退後、様々な職を転々とし、新聞記者のかたわら創作を開始する。1928年に発表した「沓街時次郎」が話題となり、いわゆる“股旅物”の流行作家となる。1956年『日本捕虜志』で菊池寛賞、1962年多年にわたる演劇界への貢献により朝日文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sayzk
6
固有名詞と江戸時代の世の中の仕組みに関する用語が多く、文章も言葉のつなぎや句読点の付け方がちょっと私には合わなかった。講談のような展開のわくわく感もなかった。 早い話が少し読みにくかった。テンポと読みやすさと史実に基づく現実味をこっちが勝手な期待しすぎていた。 しかし、敵討ちの苦難はたっぷり感じられた。2021/12/03
うーちゃん
4
角川文庫から一緒に出た「日本敵討ち集成」が良かったので、「異相」にも挑戦した。全国の古文書から仇討ちの事例を集めて並べたのが「集成」。これに対し、「異相」は、特殊な敵討ちに焦点を絞ったうえ、読みやすさを優先し、一定程度、会話文や現在では分かりづらい風物についての説明が入っている。とはいえ、創作で話をふくらませることはほぼないようだ。一番ビックリしたのは、仇討ちをやり遂げた人物が後に大審院の判事になったというくだり。今なら、殺人犯が最高裁の判事になるようなものだ。まったく「事実は小説より奇なり」だ。2018/12/22
風が造る景色
2
異相とは、普通とは違った姿。 鍵屋の辻や赤穂浪士とか大河ドラマになる有名な敵討ちではない、人知れない敵討ちから江戸期の心意気と世相を表す。 『瞼の母』の著者の晩年、大型トランクいっぱいに書き溜めた草稿の中から選び抜かれた13編。 どれも後から飾ったものでない事実を連ねる書き方で迫力と残酷さがある。 特に数編の主人公は武家でもなく、町人や農家であったりで、それでも数十年の苦難の末に敵を討ち果たす。人の一生のすべての力と時間を使ってやり遂げる、清冽で壮烈な精神の姿が感動的な話となっている。2021/02/15
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