出版社内容情報
下谷、山伏町にある裏店、通称『三年長屋』。この長屋に住むものは、なぜか三年ほどで、出世していくため『出世長屋』とも呼ばれていた──。河童の神様が奉られた長屋で起きる奇蹟の感動物語。
内容説明
下谷の山伏町にある風変わりな名前の「三年長屋」。その河童が祀られた長屋に三年ほど暮らした者は、居職の者なら工房と弟子を抱え、棒手振り稼業なら表店を出し、女子は良縁に恵まれるという―。お節介と差し出口が過ぎる差配と、一癖も二癖もある店子たちの願いは、果たして叶うのか…。
著者等紹介
梶よう子[カジヨウコ]
東京都生まれ。フリーランスライターのかたわら小説執筆を開始し、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞大賞を受賞。08年「一朝の夢」で松本清張賞を受賞し、同作で単行本デビューを果たす。以後、時代小説の旗手として多くの読者の支持を獲得し、16年『ヨイ豊』で直木賞候補となり、同作で第5回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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初美マリン
122
こんな時代だからこそ、心に傷を負ってもまじめに生きて、みんなうまくいってめでたしめでたし、でいいんだと思った。2020/08/11
のぶ
92
人情味に満ちた物語だった。三年住むと願い事が叶うという長屋を舞台にいろいろな人が入り乱れ様々な交流を描いている。主人公は、この三年長屋の新米差配となった左平次。この左平次が非常なお節介者で、人にどうこう言われてようと少しも懲りずに口を挟んでいく。他に登場する人物もとても明るく楽しい人ばかり。家主のお梅が送り込んでくる新たな住人たちやお梅自身にも事情がありそうで、他にも悪役人と悪家主コンビが正体を現し、左平次との対決の話も盛り込まれている。てんやわんやで楽しい群像劇だった。2020/04/16
タイ子
83
長屋が舞台の小説って数多あれどその数だけ物語があって、味わいが出てていいですね。「三年長屋」またの名を「かっぱ長屋」あるいは「出世長屋」と呼ばれ、祠にまつられている河童が運を運んでくるという噂。3年住めば誰かが幸せになり長屋を出て行くという、嘘のようなホントの話が。長屋の住民を差配するのが元武士で生真面目、真正直な男。主は何やら訳ありの老婆。奉行所の悪奉行と他所の差配の悪だくみをやっつける終盤はスカッとする。願いが叶うのは神様でも河童のおかげでもない。そこには意味があるから…。ほっこりする作品。2020/09/13
おたけஐ೨💕🥒🍅レビューはボチボチと…
79
85/100点 初読みの作家さん。河童を奉り3年住むと願いが叶うという「三年長屋」を舞台に、そこの差配を中心にした長屋の住民の暮らしと騒動を描いた江戸の人情物語。日頃時代小説を読まない自分でも、涙あり笑いあり、そして最後には悪い奴らを懲らしめる話しが面白く、充分楽しめさせて貰えました。ただ登場する人たちにもう少し魅力があればもっと良い作品になったのではないかと思われる点が少し残念です。2020/07/24
とろとろ
70
長屋の奥に河童が祀られた祠があり、なぜか三年ほどで出世したり良縁に恵まれたりする。で、通称「三年長屋」あるいは「河童長屋」とも呼ばれている。主人公は、この長屋の差配となった元武士。けれど、この主人公が非常にお節介者で、人にどうこう言われようと少しも懲りずに口を挟む。「差し出がましいようですが…」が口癖。長屋にすむ店子は、みな明るくて心温まる良い人ばかり。差配だけでなく家主の来歴も少しずつ解き明かされていくのだが、その間にも悪い役人を退治したり、意地悪い他の差配と対決したりと次々と事件が起こる。面白かった。2020/06/16