出版社内容情報
南国薩摩のお家騒動に想を借りて、激動する幕末維新期の様相を、経済、因習、新旧勢力の対立と抗争など、重層的ダイナミズムの中に捉える意欲大作。
内容説明
斉彬の三人の子供のあいつぐ変死。異国との密貿易が幕府に露見し、その責任をとったお由羅一派の家老・調所笑左衛門の死。斉彬派とお由羅の方一党との対立は益々深刻化していた。お由羅派の兵頭家・牧仲太郎は、凄惨な呪法争いでその師・玄白斉を斃し、斉彬をも呪殺しようとする。一方、斉彬を助け藩の刷新を行おうとする軽輩の益満休之助らは、その陰謀を打ち砕こうと牧と対決するが…。一躍筆名を高めた著者畢生の大作!
著者等紹介
直木三十五[ナオキサンジュウゴ]
1891年生まれ。1934年没。小説家、また脚本家、映画監督。早稲田大学英語科中退。1923年『文藝春秋』の創刊に参加する。『由比根元大殺記』(1929)、『南国太平記』(30~31)が評判となり、流行作家となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
44
ますます激化していく「お由羅騒動」。史実と創作の入り混じった世界観はどこまでも対立で成り立っているのだと思いました。直木賞の原点であるだけに面白かったです。2022/01/02
花乃雪音
15
「お由羅騒動」を架空、実在の人物を織り交ぜ描いた伝奇歴史小説。上巻では伝奇色が強かったが下巻では歴史小説色が強くなった。一番の見せ場は死の間際、島津斉彬が西郷や大久保に語りかける場面。「後を頼む」といった簡潔なことは言わず、権力で言いくるめることもなく、殿様が軽輩に理でもって説得する場面は斉彬の名君ぶりと斉彬が起こした事業にどのような顚末を迎えようと、後に西郷らが意思を受け継ぎさらに発展させることを強く感じさせる。2019/11/29
ちゃーりー
7
下巻、読了。まず驚くのは、本作が昭和5年から6年にかけて連載された作品、ということ。柳条湖事件が勃発し、満州事変へと発展した時期。明治・大正期の薩長閥から軍閥へと、世の中が変わったからこそ書けたのか。 講釈師 南玉による講談のくだりは、現代の読み手にはやや煩く感じるものの、志士たちの斬り合いや、呪術の鬼気迫る筆致は、さすが風雪に耐えて読み継がれる名作。 ごく簡単に言ってしまえば、お家騒動ではありますが、島津家を大企業になぞらえると、平成、令和の世にも、同じような騒動がいくつか思い当たります。2023/04/04
suzuki
6
下巻では、島津家、仙波家と牧家それぞれの行く末が語られる。 立場によってそれぞれの正義がある、という普遍的テーマのもとに書かれているのがよかった。 斉彬の死の床での言葉がなかなか良かった、のだけど、史実との時間軸のずれが気になってモヤっとしてしまった。2022/08/16
寝言小僧
2
いかんせん史実ベースであるがゆえに、希望を示していても読み手としてはなんとも歯切れの悪い結末。せめて架空のキャラクターであろう仙波一家、兵道家の牧との決着くらいは気持ちの良い物であってほしかったがそれすらも不完全燃焼で終わるので、これを重厚とみるか、どうにも娯楽性に欠けるとみるか。自分は後者。2024/01/18
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