出版社内容情報
ご一行様の旅行代金は一人頭六千万円、月を目指して宇宙船ではどんちゃん騒ぎ、着いた月では異星人とコンタクトしてしまい、国際問題に……!? シニカルな笑いが炸裂する標題作ほか短篇七篇を収録。
内容説明
「月行てこましたろか」。ひとり六千万円の月旅行に出ることになったご一行様。観光用宇宙船の中で大暴れ、着いた先の月では異星人と最初の接触を取ってしまい、国際問題に発展するが―(「農協月へ行く」)。地殻変動で、日本を除く陸地のほとんどが海没、各国の大物政治家から領土をねだられた日本は(「日本以外全部沈没」)。ほか、「経理課長の放送」「自殺悲願」など痛烈なアイロニーとブラックな笑いに満ちた短篇七作を収録。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934年大阪生まれ。同志社大学文学部卒業。主な作品に『虚人たち』(泉鏡花文学賞)『夢の木坂分岐点』(谷崎潤一郎賞)『朝のガスパール』(日本SF大賞)「ヨッパ谷への降下」(川端康成文学賞)『わたしのグランパ』(読売文学賞)などがある。ほか、フランス・パゾリーニ賞、菊池寛賞受賞。フランス・芸術文化勲章シュバリエ章、紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
95
初版は昭和54年。この頃筒井康隆にハマって読んでいたのを思い出した。冒頭の「農協月へ行く」昭和の45年すぎ日本の農協はパリやローマ、各地を団体で旅行するのが流行っていたな、円もまだ300円を超える時代だっので今考えるといかにお金があったかということ。その農協の団体さんが月旅行へ行く話。「日本以外全部沈没」はタイトル通り。好きなのは「村井長庵」とある江戸から小さな島へやってきた話。もし映画化しようとしても絶対無理のなんでもありの話。どれも皮肉やユーモア、そして怖さに溢れている。2024/09/03
催涙雨
60
「人類はみな平等。愛。性善説(中略)こういうものはみんな嘘であり〜」この理屈自体は理解できるしブラックユーモアも嫌いではないのだが、なんだろう、単に胸糞の悪くなる話を下ネタと混ぜたようなものはあえて読みたいと思うほど好きではないみたいだ。表題作や「信仰性遅感症」は有り体に言って嫌いだった。綺麗事をぶっ壊そうとする姿勢そのものにはいくらか共感を呼ぶものもあるのだが、あまりに対極的すぎると綺麗事と同じくらいわざとらしい代物になるよなあ、と思ってしまう。「経理課長の放送」と「自殺悲願」はわりと好きな作品。2019/06/06
おいしゃん
46
パロディ短編集。どれもドタバタ劇ながら、場面が全く違うので、色んな味わいを楽しめる。久しぶりの筒井作品だったが、他のも読みたい。2018/05/21
姉勤
40
映画やアニメから入り、著者の代表作と言える「時をかける少女」の次に本書を手に取った少年少女は卒倒するか、変な性癖に目覚めるや。7編にわたる、悪意と下ネタと諧謔と皮肉を尽くした、ナンセンスな短編集。しかし我々が遵法し真摯に向きあう現実社会と紙一重でもある。70年代はこれがダイレクトで許されたのか。表題のほか、収録の「日本以外全部沈没」は小松左京に許可をもらったのか。以後の短編もページを捲るほど"濃度"は濃くなっていく。毒も処方次第で薬にもなる。しかし、これだけ世の時勢が変われば、断筆したくもなるだろう。2025/05/03
NADIA
40
うーん、久々の昭和のパワーに圧倒された(^^;; この頃の世界から見た日本のイメージは今とは全然違うんだなあ。 野暮ったくて図々しくてたくましい。醒めた現代人にあの農協パワーを!! でも昭和特有の独特のドタバタ感についていけず、久々の途中挫折(^^;2018/10/12