出版社内容情報
田辺 聖子[タナベ セイコ]
著・文・その他
内容説明
銃後の子供はとにかく体が丈夫でないとあかんのだ。在郷軍人の小父ちゃんが台に上って号令をかけるラジオ体操。歌う唱歌は「敵の将軍ステッセル」。千人針と慰問袋のある戦時下、トキコは高等女学校の入学試験を受ける。出征した男たちは、桜のように散り、人生の花を独り占めし、女はカスの部分をつかまされる。中原淳一の絵を見ては、ちぢれ毛をまっすぐにして下さいと祈る、ささやかな日常の中に戦争が描き込まれた、名連作短篇集。
著者等紹介
田辺聖子[タナベセイコ]
1928年、大阪生まれ。樟蔭女専国文科卒。64年『感傷旅行』で芥川賞、87年『花衣ぬぐやまつわる…』で女流文学賞、93年『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞、94年菊池寛賞、98年『道頓堀の雨に別れて以来なり』で泉鏡花文学賞、99年、読売文学賞を受賞する。2000年文化功労者に。08年には文化勲章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
100
日常の中に戦争がある風景をまざまざと見せられました。体が資本の日々だからこその男尊女卑の辛さがあるような気がします。男性は出征という名ばかりの名誉のために花のようにもてはやされ、女性はただ戦時下の日常でひっそりと暮らすしかなかったのですね。そんな中でも中原淳一の絵を愛でたり、教会に行ってみたり、ささやかな日常を大切にしている姿に惹かれました。おせいさんが戦争を生きたからこそ生まれた作品。戦争を知らない世代ですが、心に刺さるものがありました。2017/09/10
chantal(シャンタール)
66
ドラマ「芋たこなんきん」見てどうしても読みたくなって積んだこちら。田辺聖子さんの自伝的小説。青春時代がそのまま戦時中だった田辺さんが軍国少女になってしまうのは仕方ない。そんな時代でも、何となしに楽しくやっているように見えるけれど、周りの人が出征したり、学徒動員で工場へ行かされたり、美味しいものが食べられなかったり、戦争ってやはり悲惨でしかない。そんな時代を私は絶対に迎えたくないと思う。最近色々物騒だけど、大丈夫なんだろうか?彼女がどうこうより時代なんだろうけど、朝鮮人への差別はすごかったようだ。2024/04/11
Shoji
58
主人公トキコの多感な時代は目まぐるしかった。悪化する一途の戦局、空襲、敗戦、戦後復興、怒涛の時代はトキコにとって、女児から少女、大人へ成長していく時代でもあった。生活の全てが深刻に不足する時代、全編に漂う戦争の生々しさ。成長していくトキコの瑞々しい感性、根っから大阪人のユーモア、厳しい戦局との対比はとてつもなく切ない物語に私は感じた。良書だ。2018/10/25
鍵ちゃん
46
銃後の子どもはとにかく体が丈夫でないとあかんのだ。在郷軍人の小父ちゃんが台に上がって号令をかけるラジオ体操。歌う唱歌は「敵の将軍ステッセル亅。千人針と慰問袋のある戦時下、トキコは高等女学校の入学試験を受ける。出征した男たちは、桜のように散り、人生の花を独り占めし、女はカスの部分を掴まされる。中原淳一の絵を見ては、ちぢれ毛をまっすぐにしてくださいと祈る、ささやかな日常の中に戦争が描きこまれた。トキコの無邪気さが冴え渡り、戦争を通じての生活の変化がよくわかる作品でした。2023/08/24
Gotoran
39
田辺聖子の自伝的作品。昭和3年生まれの大阪のお嬢さんが戦争時代に翻弄されながらも、娘としてどのように戦争社会に立ち向かってきたのか、ほんわかした雰囲気で、死と向き合う人生、また、朝鮮人の当時の置かれた立場など、本音で語られている。戦後の民主主義的傾向強化という国の方針転換についても、一定の矛盾を感じながら、また、人間天皇も、当時の世相を緩やかに描く。著者独特の優しい文体で、自身の経験を客観的視点で書き表した当時の市井の人々の様子が手に取るようにわかる。面白く読んだ。小松左京氏の巻末解説も興味深かった。2026/02/05




