出版社内容情報
人間の身体を侵食していく植物が町を覆い尽くしたその先とは――表題作「白昼夢の森の少女」をはじめ、現実と異界のあわいをゆうゆうと飛び越える、ダークファンタジーの傑作短編集。
内容説明
異才が10年の間に書き紡いだ、危うい魅力に満ちた10の白昼夢。人間の身体を侵食していく植物が町を覆い尽くしたその先とは(「白昼夢の森の少女」)。巨大な船に乗り込んだ者は、歳をとらず、時空を超えて永遠に旅をするという(「銀の船」)。この作家の想像力に限界は無い。恐怖と歓喜、自由と哀切―小説の魅力が詰まった傑作短編集。
著者等紹介
恒川光太郎[ツネカワコウタロウ]
1973年東京都生まれ。2005年、『夜市』で日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。同作で直木賞候補に。14年、『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
402
恒川 光太郎は、新作中心に読んでいる作家です。本書はヴァラエティに富んだ幻想譚の短編集でした。オススメは、『古入道きたりて』&表題作『白昼夢の森の少女』&『傀儡の路地』の3作です。2019/06/10
しんたろー
317
2008年~2018年に雑誌やアンソロジー集に発表された10作の短編集…作風は様々だが、どれも恒川ワールド!ファンなら必読と思うが、初読みの人には簡潔なだけに魅力が伝わり辛いだろう。甲乙つけ難いが、実話怪談の『布団窟』は幼少期に夢想した事でゾッとしたし『傀儡の路地』は著者らしいダークファンタジーで嬉しい。『銀の船』は大好きな長編『スタープレイヤー』に似た雰囲気だし『夕闇地蔵』は初期の「和風怪奇譚」のテイストが色濃く出ている。どの話も大人向け絵本の原作になると思えた。愛蔵して、たまに読み返したくなる一冊♬2019/05/23
風眠
267
「それでその後どうなったの?」聞きたくても、ばんっとドアを閉められて真相は藪の中。確かにこの手に触れたはずなのに、夢だったのかと思うような感覚。言葉にするのは難しいけれど、小さなピアスを外した時にパラっと落ちて、そのまま見つからず、という感じに似ている。キャッチはこの手に、残っているのに。日常の中にまぎれて起こる不思議なこと。これは現実なのか夢なのか、境界線が曖昧になってゆく不安な感じ。これはまさに白昼夢のような短篇集。幻想的だけれど残酷で、結末を書かずに終わる余韻の美しさが、いつまでも胸をざわつかせる。2019/09/04
おしゃべりメガネ
209
恒川さんが10年の間に書き綴っていた短編集で、やっぱりさすが恒川さんでした。10年という歳月で『夜市』でみせてくれた不思議な世界観はしっかりそのまま継承し、かつ更にファンタジーさはグレードアップしているという、まさしく無敵&無双モードです。毎回恒川さんの作品のレビューを書くトキにどうしても書かざるを得ないのが「恒川さんにしか書けず、恒川さんだからこそ書ける」作品だというコトです。どうしてこんなにも不思議な話がポンポン出てくるのか、それこそソコが不思議でなりません。別世界へ誘ってくれるステキな読書時間です。2019/06/14
bannai
196
「布団窟」を読んで思い出したことが一つ。小学生の頃、冬の夕方5時に起きた時に、時計を見て朝の5時に起きたと勘違いし、いつもなら朝横に寝ている兄弟が見回してもおらず、不安になって、1階に降りたら、家族が日常を過ごしていて安堵した。何てことはない体験だけど、当時はそれを思い出すとドキドキしてました。目覚めて現実を認識するまでの時間はまさにファンタジー的なのか?子供が目覚めて泣く理由とかが気になりました。「傀儡の路地」「銀の船」が好きです。2023/01/19