内容説明
売れないもの書きの廣介は、極貧生活ながら、独特の理想郷を夢想し続けていた。彼はある日、学生時代の同窓生で自分と容姿が酷似していた大富豪・菰田が病死したことを知り、自分がその菰田になりすまして理想郷を作ることを思いつく。荒唐無稽な企みは、意外にも順調に進んでいったのだったが…。ほかに「石榴」を収録。妄想への飽くなき執念を描くベストセレクション第6弾。
著者等紹介
江戸川乱歩[エドガワランポ]
1894年三重県生まれ。早稲田大学卒業。雑誌編集、新聞記者などを経て、1923年「二銭銅貨」でデビュー。以後、探偵小説を次々発表。怪奇小説、幻想小説にも優れた作品が多い。代表的なシリーズに、「怪人二十面相」「少年探偵団」などがある。日本の小説界に多大なる業績を残す。65年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ムッネニーク
156
11冊目『パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション⑥』(江戸川乱歩 著、2009年5月、KADOKAWA) 1926〜1927年にかけて連載されていた表題作の他、1934年に発表された中編『石榴』も収録。 どちらも乱歩らしい耽美でグロテスク、そして奇天烈な作品である。 「そして、丁度その時、まるで申合せでもした様に、打上げられた花火の、巨大な金色の花弁は、クッキリと黒天鵞絨の空を区切って、下界の花園や、泉や、そこにもつれ合う二つの肉塊を、ふりそそぐ金粉の中にとじこめて行くのでした」2023/03/09
nobby
145
ようやく手に取った念願の表題作。もう“パノラマ”とか“奇譚”など目にするだけで期待高まるばかり。序盤から死人が甦るなんて展開に惹き込まれ、壮観で耽美なユートピアに魅せられているうちに、いつのまにか妖艶そして変態な世界に酔い惑わされている…そして最後には明智ならぬ北見小五郎が探偵役で登場と、まさに全編にわたり乱歩を味わう傑作!裸女多勢によるエロティック演出は過剰過ぎるけれど(笑)無尽蔵の富の力で作り上げた理想郷は是非とも目にしてみたいが、一方で取るにも足らぬ望みという千代子への恋だけ叶えられないのが切ない…2018/10/19
キナコ
69
久しぶりの江戸川乱歩作品。今回は幻想小説。自身が考える最高の芸術作品を作ろうとする狂人視点でストーリーが進む。現代でいうトリックアートを利用した幻想の庭。夢と現実との境目を行き来する主人公がなんとも言えない。 また別作品として『柘榴』が掲載。ミステリーとホラーが絶妙に入り乱れた作品。2024/06/07
*maru*
57
最近第5弾まで読了した娘が「めっちゃ怖い、気持ち悪い、乱歩やばい」と言いながら、何度も何度も読み返していることをまずはご報告。さすが親子。さて、母はベストセレクション第6弾。夢想や執念も、ここまでくるともはや芸術の域。代表作のひとつ、壮大で幻想的な『パノラマ島綺譚』と、巧妙かつ大胆不敵な『石榴』。同じタイプのトリックを用いた作品なのに、なぜこれほど読み心地が違うのか。乱歩やばい。美しく、グロテスクな物語を心から堪能。登録できなかったけど、田島さんのカバーイラストもたまらなく好きだ。2019/12/04
そら
47
そうそう、江戸川乱歩ってこんな感じだったな〰。懐かしくて、やっぱり今読んでもとっても面白かった!妖艶、狂人、酔狂、、、幻想的でもって大衆的。「パノラマ島奇譚」殺人シーンがエロい(笑)。裸婦たちの乗り物!?(苦笑)「石榴」ゆっくりと推理しながら読めるし、どんでん返しもあるし、余韻も良かった!解説で知ったけど、横溝正史は江戸川乱歩の担当編集者だったって⁉2019/06/26
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