• ポイントキャンペーン

やみ窓

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 272p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784041050774
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

第10回 幽文学賞短篇部門 大賞受賞作品に書き下ろしを加えた連作短篇集2年前に結婚し、夫と死別した柚子は昼間はコールセンターで働く シフト制で働くフリーターだ。義理の母は柚子に息子を殺されたと罵倒する。柚子が味わった地獄は、別の形となって続いていた。それは何の前触れもなく突然やってくる異界のものたちとの闇の取引だ。いつ蹂躙されるともしれない危険と隣り合わせだが、窓の外の哀れな貧しい物の怪たちの来訪を待ちわびる柚子なのであった……。(「やみ窓」)
 月蝕の夜、「かみさん……」土の匂いのする風が吹き、野分の後のように割れた叢に一人の娘が立っていた。訛りがきつく何をしゃべっているか聞き取れないが、柚子を祈り、崇めていることが分かった。ある夜、娘は手織りの素朴な反物を持ってきた。その反物はネットオークションで高額な値が付き……。そんなとき団地で出会った老婦人の千代は、ネットオークションで売り出した布と同じ柄の着物を持っていた のだ。その織物にはある呪われた伝説があった……。(「やみ織」)
 ほか、亡き夫の死因が徐々に明らかにされ、夢と現の境界があいまいになっていく眩暈を描いた「やみ児」、そして連作中、唯一異界の者の視点で描いた「祠の灯り」でついに物語は大団円に。新人とは思えない筆致で細部まで幻想と現実のあわいを描き、地獄という恐怖と快楽に迫った傑作。

やみ窓
やみ織
やみ児
祠の灯り

篠 たまき[シノ タマキ]
しの・たまき●秋田県出身。東京都在住。エディトリアルデザイナー、イラストレーターを経て、実用書作家、取材ライターとして活動中。執筆した実用書には海外にて翻訳出版されたものもある。試みに執筆した携帯小説に手応えを感じて「幽」文学新人賞に応募。第10回「幽」文学賞短篇部門にて「やみ窓」で大賞受賞。本書が小説の単行本デビュー作となる。

内容説明

第10回『幽』文学賞短篇部門大賞受賞。くたびれた団地の窓の向こうから、かさり…かさり…と何かがやって来る。今夜も一瞬も気を抜けない闇の取り引きが始まる―。寄る辺ない“怖さ”を巧みに描いた受賞作の「やみ窓」をはじめ、書き下ろし3篇を加えた連作短篇集。

著者等紹介

篠たまき[シノタマキ]
秋田県出身。エディトリアルデザイナー、イラストレーターを経て、実用書作家、取材ライターとして活動中。執筆した実用書には海外にて翻訳出版されたものもある。試みに執筆した携帯小説に手応えを感じて『幽』文学賞に応募。第10回『幽』文学賞短篇部門にて「やみ窓」で大賞受賞。小説の単行本デビュー作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

164
やみが夜毎に窓をたたく。ぽと、ぽと、と。私はひかりの側に立ってやみが訪れるのを窓越しに見ていたつもりだった。あくまで私は「こちら」にいるのだと。そんな気になって。 やみが夜毎に私をおそれるようになり、私は夜毎におそれるに足るものになった。決して相容れない「あちら」のものたちといる方が落ちつくことを、ほんとうは最初から知っていたのかもしれない。どうせ私は×××で、いつ死ぬともなしに生きている。もう、おそれるものなど。何もないのだから。2020/03/07

ちょろこ

107
設定、雰囲気、共にひきこまれた一冊。夫と死別した柚子。毎晩座る夜の窓辺は闇の世界との接点、そして柚子の大切な夜の収入源。このちょっと幻想的な設定、雰囲気にまず意表を突かれ、瞬く間にひきこまれた。異世界と現世界との物の価値、見え方を絡めるところも面白く、次第に闇に堕ちていく柚子の姿にはどことなく美しさを感じる。柚子の微笑みは天女なのか…最終章の醸し出すほのかな物哀しさがその後の想像をたまらなくかきたてる。2018/11/05

タイ子

96
幽玄の世界でもあり、現実社会の裏側を覗いた感じでもあり不思議な感覚を覚える作品。柚子という女性、夫が1年前に事故で亡くなり今は契約社員としてひっそりと暮らす。彼女の住む3階の窓の向こうに不定期に訪れる得体の知れない訪問客。彼らの物々交換が高価な物に対して要求するのがペットボトル。時代が違うと価値も違ってくる。そして、見る方向から違うと世界も反転して見える面白さ。柚子も姑から見ると息子を殺した憎き嫁と言われ、訪問者からは天女と思われ人間も世界も見える事が全てではない事を教えてくれる。すごいな、篠さん。2021/06/30

モルク

94
寂れた団地の3階に夫を亡くした柚子は越してくる。夜になると腰高窓をぽとぽと外から叩く音が…そこは何百年前の異界と繋がっていた。異界の者たちは柚子の喜びそうな物を献上し対価としてペットボトルを貰う。柚子は献上品を転売し利益を得る。柚子は神か天女か、はたまた山姥か。ねっとりとしたこの世界に次第に引き込まれていく。連作であったが、深い闇の底に落ちていく感じだった。息子を殺されたと柚子を恨む義母がどこまでも追いかけてくるのがこれまた怖い!「人喰観音」の作家さんのデビュー作だが、やはり目の離せない作家である。2020/02/18

ゆみねこ

91
第10回「幽」文学賞短篇部門大賞受賞作。篠たまきさん、初読み。夫と死別した36歳の女性が住まう、古びた団地の窓は、夜の闇に紛れて異界とつながる。「かみさん」と呼ばれ、異界のものたちが貢ぐものと引き換えるもの。怖さより不思議さと切なさを感じる物語でした。この賞が今回で最後とのこと、ちょっと残念です。2017/02/22

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/11232966
  • ご注意事項