出版社内容情報
櫛木 理宇[クシキ リウ]
著・文・その他
内容説明
皆川美海は平凡な高校生だった。あの女が、現れるまでは…。幼い弟の事故死以来、沈んだ空気に満ちていた皆川家の玄関を、弟と同じ名前の少年が訪れた。行き場のない彼を、美海の母は家に入れてしまう。後日、白ずくめの衣裳に厚塗りの化粧をした異様な女が現れる。彼女は少年の母だと言い、皆川家に“寄生”し始め…。洗脳され壊れてゆく家族の姿におののく美海。恐怖の果てに彼女を待つ驚きの結末とは…。傑作ミステリ。
著者等紹介
櫛木理宇[クシキリウ]
1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みも
230
本著の下敷きにしたのであろう「北九州監禁殺人事件」「尼崎連続変死事件」は、相関関係の複雑さに於いて不可解な点が多く「事実は小説よりも奇なり」を具現化する。その奇妙な事件を模し、少ない人物とシンプルな構成で簡潔化する。支配者の制裁と命令手法、被支配者の盲信と隷属に至る心情をロジカルに巧妙に描く。実際の事件を意識するとその現実感が増し、人間性の瓦解はかくも容易く、不眠の蓄積が狂気の入口だと知る。支配と被支配の逆転に些か唐突感があるものの、概ね緊張感が持続しフィクションならではの希望が救いか。#ニコカド20202020/12/17
W-G
182
まずまず。北九州監禁殺人を題材にした作品はいくつか読んできましたが、誉田作品や新堂作品やウシジマ君と違い、もう少しミステリ寄りな作品。家族の崩壊に至る過程や、裏切りあいの凄惨さに重点をおく前述作品と比較して、良くも悪くもマイルド。他の作品でも繰り広げられるような拷問シーンなんかは、私個人としてはもうお腹一杯で飽き飽きなので、その点は良い感じで話が進んでくれた。葉月の設定に無理があるのと、圭介のキャラや行動がブレブレなのは少し気になった。このモチーフを使って書かれた作品にはもう新しい興奮は期待出来ないかな。2016/07/04
おかむー
104
ホラー文庫なのだけれど超常的なものではなくサイコホラー・・・というよりはフィクションの形をとって実際の事件をなぞった作品ですね。犯罪史のなかでももっとも悪質なたぐいの、虐待と洗脳によって家族同士に殺し合いをさせた北九州監禁殺人事件や尼崎連続変死事件で使われた手法をほぼそのままで物語にしているので、単純に小説として割り切って読めないぐらいにはやるせない。物語としては犠牲はあっても解決する結末となっていますが、現実の事件の結末を考えるとこの作品に関しては良しとも悪しとも評価はしかねますね。2016/08/21
りゅう☆
99
不在気味な父、溺愛の長男が亡くなり情緒不安定な母、真面目な長女、家族から孤立してる次女、我がままな三女の皆川家の元に弟と同じ名前の朋巳が迷い込んできた。そして後に顔を真っ白に塗りたくり、フリルのワンピースに長手袋をはめた朋巳の母葉月と彼女の弟圭介が皆川家に居候することになってから家族が壊されていく。睡眠不足、マインドコントロール、崇拝。家族同士憎しみ合うように仕向けられる。人ってこんなに簡単に崩壊してしまうことに恐怖におののく。一方、葉月に家族を崩壊され行方不明の弟を探すべく兄が動く。予想だにしなかった→2018/08/09
アッシュ姉
87
『寄居虫女(ヤドカリオンナ)』からの改題。北九州や尼崎事件を彷彿とさせる内容。凄惨さは実際の事件には及ばないが、一気読みさせる吸引力があった。極限状態に追い込まれた人間とはなんと脆いものか。ここまで追い詰める人間の思考回路はどうなっているのだろう。犯罪史上空前の残虐性で世間を震撼とさせた大量殺人事件。読後にいろいろ調べてしまった。知れば知るほど実際に起きたこととはとても信じられない。だが事実なのだ。同じ題材を扱った誉田哲也さんの『ケモノの城』も読んでみたい。2017/02/20