出版社内容情報
没後25年、伝説的存在であり続ける人形作家の、最新撮り下ろし写真集。
本書は人形蒐集家の片岡佐吉が、2001年より15年近くにわたり撮りためてきた可淡人形の作品集である。可淡人形の棲み家を屋内のみならず屋外に求め、撮影された。片岡佐吉は、02年、御徒町の人形博物館「マリアクローチェ」、07年、渋谷「マリアの心臓」、15年、京都・大原の「マリアの心臓」にて、可淡人形の展覧会を開催。人のみならず、生きとし生けるもの、架空の生きもの。すべてが息づく可淡人形の、永遠の棲み家がここに誕生した。
「情熱的で耽美で、大地から呻き上がるような存在感。人に愛される人形よりも人を愛する人形を――。可淡人形は、その願いを込められてこの世に生まれた。人の心の底をえぐりとる可淡人形たちの棲み家が、ここにある。」
人形蒐集家・写真家 片岡佐吉
「人形は虚ろ。虚ろであるからこそ、それは見る者・撮る者の精神からさまざまな想いを吸収し、さまざまな“物語”をこの世に現出させるのである。」
綾辻行人(巻末エッセイより)
内容説明
まだ見ぬ国に人形たちの棲むという。没後25年。伝説の可淡人形がいま蘇る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
むつぞー
28
ただ美しいのではない人形たち。より妖しさというか怖さみたいなものが強調されているような気がします。でも見応えがあるし、装丁やデザインの美しい本です。2016/01/26
しましまこ
20
禍々しい美しさ。虚ろな瞳は悲しいのか恐ろしいのか。屋外の写真が衝撃的。秘密にしたいんだけど、復活譚、出たからにはカタンドール知って欲しいな。2016/02/07
橘
19
天野可淡さんの人形はとても惹かれます。恐くて儚くて、でも強くて美しくて、狂気も感じます。人間のようなものも、人間のようでないものも、目が離せません。最後にある綾辻行人さんの文章も好きでした。2018/10/20
活字スキー
19
「目は口ほどに物を言う」らしいが、魂を持たぬ造り物、紛い物に過ぎない筈の彼女達の目力はなんなのか。そこには「不気味の谷」と逆の現象がある。彼女達は明らかに、人ではない。部分的には精巧に人体を模している者もいるが、どう見たって人形だ。ただの人形なのに……人形だからこそ、見る者の魂を惹き付ける魅力が、その裡に宿っている。いつか、そう遠くないうちに、彼女達に逢いに行こうと思う。2016/04/01
gelatin
5
★★★(★) 撮り手の思いが反映され過ぎているように感じる。これは嫉妬だろうか。人形展で実際に見た可淡ドールはもっとずっと静かだったので、この写真の中の彼らは饒舌な死体のよう。作為的でない配置のなかにあっても、ぎゅうっと意識の奥をつかまれるようなあの感覚が恋しい。虫の羽のある妖精の写真と、解説が良かった。2016/01/02