出版社内容情報
国家機密を手にした男女の逃避行! 超弩級リアルフィクション!!
北朝鮮の国家最高機密とともに脱北した女・崔純子。彼女を国境へと導く日本人工作員・蛟竜。中国全土を逃亡する二人の行方を各国の諜報機関が追う。日本を目指す壮絶な逃亡劇の果てに二人が辿り着いたのは……。
内容説明
2010年冬、北朝鮮の工作員だった崔純子は国家機密と共に脱北、中国に入った。日本の亜細亜政治研究所の工作員、蛟竜はハルビンで純子を保護し、中国からの脱出を図る。国家機密をめぐって各国の諜報機関が暗躍する中、北朝鮮国家安全保衛部の朴成勇と中国国家安全部の厳強幹は、2人を執拗に追い続ける。純子が持ち出した国家機密とは、いったい何なのか。日本を目指す壮絶な逃亡劇の果てに待ち受ける、衝撃の結末!
著者等紹介
柴田哲孝[シバタテツタカ]
1957年東京生まれ。日本大学芸術学部中退。2006年『下山事件最後の証言』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)と日本冒険小説協会大賞(実録賞)、07年『TENGU』で大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
334
柴田哲孝は初読。文体の感じは、しいていえば馳星周に似ているか。全体にハードボイルドなタッチで描かれているが、感性は時としてしめやかである。小説世界のスケールは大きい。日本、北朝鮮、中国、アメリカそれぞれの諜報員が跳梁跋扈する謀略戦を描く。主人公の蛟竜と純子はなかなかに魅力的だ。敵役はそれぞれに凄みがあるし、中国政治の重鎮たちもまた別の意味で強い存在感を示す。しかも、主人公たち以外の人物たち(オバマや金正恩、習近平等)はすべて実名で登場する。彼らが画策する世界情勢の動きと、その背後の思惑もまた説得力がある。2023/04/17
shiozy
36
文字通り圧巻の760頁である。脱北した北朝鮮工作員崔純子を日本工作員咬竜が保護し脱出を図るというサスペンスなのだが、柴田哲孝の凄いところは、現在進行形の現代史の中でこれを語るところだ。北朝鮮の金正日・金正恩、オバマ、プーチン、胡錦涛に習近平など、世界政治面に毎日のように登場する「時の人」が脇役たちである。紙面の裏側で繰り広げられているだろう「権力闘争」を見事に描くのだ。圧巻である。2016/11/13
ねこまんま
34
今年最高の一作になると思う。読み応え抜群、と同時に、自分が世界情勢にどれだけ疎いか再認識させられた。近年の日米中韓の出来事は実話なのでリアルすぎて読む手が止まらない。だけど、いろんな事件を確認しながらだったので、かなり時間がかかったし実際、ページ数も多い。これは再読必須だわ。各国の思惑、日本の立場、米政権が交代する今、絶対読んだ方がいいと思う。お勧め。2016/11/20
大福
27
世界の歴史の裏側の陰謀を描く、柴田先生の得意なタイプ。柴田哲孝先生は一言で言えば「邪悪な池上彰」といった感じ。今回は主に北朝鮮の世襲と中国の政権移譲の背景に各国のどす黒い陰謀を解説する。全てではないだろうが一部は真実なのではないだろうか?そう考えると本当に恐ろしい。逃避行がもっとスリリングなほうが良い気がするし、蛟龍と朴との対決もやや呆気ない気もする。しかし印象的なラストシーン含めて最後まで楽しめた。2019/04/24
黒猫
22
脱北者の女性スパイと彼女を取り巻く陰謀、国際政治を描いた暗く重い作品だった。北朝鮮や中国共産党、アメリカ等の関係を知りたければ新書を読むより良い。内容は暗く陰惨である。これが北朝鮮、中国の現実なのだろう。粛清を繰り返しそれに快感を覚える北のスパイ。いつ自分が殺されるかも分からず任務を実行することが生きている証なのだろう。中国もひどい。人権などあったものではない。フィクションでありながらこれは一人の脱北者の女性スパイと、それを支えた男の愛の物語だった。やるせない読後感に浸れます。最後は予想したが泣けた。2017/01/25