出版社内容情報
著者の出自でもある和歌山県紀州の深い森を舞台に広がる怪談短編集。不条理な因習や非業の死。過酷な運命に翻弄されても、百歳を越えてなお生きる女たちがユーモラスな関西弁で語る、哀しくも不思議な美しい命の物語
内容説明
「私」が外に出るときは、どんなに悪天候だったとしても必ず晴れる。ある日、耳の奥から声が聞こえてきた。声の主は、豆粒ほどの小さなおばあさんだった。おばあさんが、なぜ豆粒ほどに小さくなったのか―。訥々と語られる、貧しい炭焼き職人の一家の物語。夫殺しの罪を着せられた母が、幼い子どもたちのためにした選択とは…。哀しみと絶望の底にさす一筋の光をしなやかに描いた傑作「晴れ女の耳」。他、七つの怪談短篇集。
著者等紹介
東直子[ヒガシナオコ]
歌人、作家。1996年「草かんむりの訪問者」で第7回歌壇賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nico🐬波待ち中
100
和歌山県紀州を舞台にした短編集。何れも日本に古来から伝わる言い伝えや昔話のような物語で、読んでいて背筋がヒヤリとなりながらも懐かしい気持ちになったり切なくなったり。特に『イボの神様』は私も小さい頃似た体験をした気がする。少女がイボ神様に必死で祈る姿が微笑ましい。信じる者は救われる…はず。そして表題作の晴れ女が身近にいたらとても助かるだろう。私の耳がキヌさんの寝床に合うといいけれど…。短編それぞれに出てくる「おばあさん」が摩訶不思議な雰囲気を盛り上げていく。幼かった頃、ふと感じた心細さを思い出させてくれた。2018/05/22
takaC
97
怪談でした。それも結構リアルに怖いやつ。和歌山だったら然もありなんと思ってしまうがな。2016/06/01
mocha
91
お伽話は読んでいても怖くない。でもそれが実際に起きたら…。1話目『イボの神様』をさらっと読んで油断してたら『ことほぎの家』でぞぞぞ。『赤べべ』でぞわぞわ…。子どもの頃、闇の濃い田舎の夜に感じた不安感、お年寄りの皺の間に埋め込まれた因習、そんなものが詰まった7話。『サトシおらんか』は実話?怖すぎる!2016/09/18
かりさ
74
七つの怪談短編集、と紹介されていたので身構えて読みましたが、怖いというよりは不思議でちょっぴり切ないお話したち。昔々の民話で語られるような懐かしい情景と共に幻想的な要素も感じられる七つの物語。それぞれで語られる理不尽で過酷な運命に、生きている人間こそが闇深く残酷なのだと哀しさでいっぱいになりました。表題作「晴れ女の耳」と「先生の瞳」がお気に入り。異形の者たちは恐ろしいものなのに、何故か境遇を聞くにつれ哀れみから愛らしい存在に。東直子さんのいつもとはまた違った不思議で幻想的な物語をまた読んでみたいです。2015/10/04
凛
56
和歌山県の民話を基にした不思議な短編集。やはり民話が基になっているからか、一つとして知っている話はないはずなのにどこか懐かしいような気持ちになる。「昔々、あるところに」そんなお馴染みの言葉で始まる物語に触れたような。方言が混じるのもまたいいのかもしれない。哀しさ、寂しさも感じさせる物語に、柔らかい響きのこの土地ならではの言葉がそっと温かみも添えてくれている気がした。自然溢れる場所ではこんなことだってあるよねと不思議と信じられる。きっとそれが日本という国なのだと思う。お気に入りは「イボの神様」と「赤べべ」。2019/11/03