出版社内容情報
北アルプス上空で、原子力科学者の搭乗した旅客機が墜落した。乗客の生存は絶望的だったが、なぜか科学者の雨村の遺体は見つからない。やがて政治家と企業の利益追求恐ろしい罠が明らかになり――。
内容説明
原子力科学の若き第一人者である新婚の夫・雨村を乗せた旅客機と自衛隊機が北アルプス上空で衝突した。乗客全員の生存が絶望視されるが雨村の遺体は見つからず、生存を信じる雨村の妻・久美子は捜索に乗り出す。やがて研究成果に群がる政財界の陰謀と、妖しい女の影が浮かび上がり―。最先端技術を巡る恐るべき“腐蝕の構造”の正体とは!?日本推理作家協会賞を受賞した、巨悪の癒着と戦う愛の行方を描く壮絶なロマン。
著者等紹介
森村誠一[モリムラセイイチ]
1933年熊谷市生まれ。青山学院大学卒。10年に及ぶホテルマン生活を経て作家となる。江戸川乱歩賞・日本推理作家協会賞・角川小説賞・日本ミステリー文学大賞・吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hit4papa
35
カップルの遭難死に端を発し、航空機事故や、原発問題や、企業の利権な、不可能殺人や、不倫が錯綜するてんこ盛りミステリです。読み進めるうちに、どちらの方向へ連れていかれるのかわからくなってしまうという展開。少なからず偶然に左右されているので、あくまで物語的に愉しむべきでしょうね。人の心のドロっとした部分をあからさまに描いているため、どんよりした雰囲気を漂わしています。随所のラブラブシーンはいらないように思いますが、発散した内容を一気にまとめ上げる力技は流石ですね。クライマックスは盛り上がります。【協推賞】2019/01/12
hanchyan@つまりはそういうことだ
34
ケも生えそろわない(笑)子供の頃以来の再読。当時は、殺人事件が一個だけなのも物足りず原発利権と商社の暗躍とか正直なんのこっちゃって感じだったが、今回はほぼ一気読み。事件現場である都心の高層ホテルとその周辺で進むはなしと、日本アルプスを舞台とする久美子の捜索行が、並行というよりほぼ乖離してるのだが、要するにこれは夫の行方を捜す新妻のロマンスなので、彼女にとってはウラン濃縮方の新発見も密室状況の真相も当然どうでもよいことなのだ(笑)。で、そのロマンスがまたやたら理屈っぽい筆致で描かれるのがなんとも面白い(笑)2016/05/04
クリンクリン
11
森村誠一往年の作品にして、日本推理作家協会賞受賞作。推理ものというよりも社会派。トリックや犯人探しよりもストーリー重視。今読むと古めかしいところもあるが、読ませる力を感じる。多作家に共通する部分なのだが、初期には本当にいい作品が多い。作品数を重ねるよりも、間隔が空いても出来の良い作品を描いてほしい。それが出来る力は持っているのだから!2015/11/08
コットン
8
森村さんの長編を久しぶりに読み切った。 沢山の伏線がどれも分野が違い、専門的な解説を読むようで感服してしまう。所々特に男女の描写などは力が入り過ぎた真面目度高めな熟語使いはウケる。森村さんにしか書けないタッチと思う。ストーリーの展開は松本清張のゼロの焦点を少し思い起こした。両作で役割的に共通するどちらの女性も趣深い。雨村と土器屋の展開は意外だった。大町がいい。2020/02/14
ナリボー
4
7/10 物語としては面白かったが冗長な感じがして最後の方は読むのが辛かった。2023/08/04