内容説明
「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」。西条八十の詩集を持った黒人が、ナイフで胸を刺されて殺害された。被害者は「日本のキスミーに行く」と言い残して数日前に来日したという。日米合同捜査が展開され、棟居刑事は奥深い事件の謎を追って被害者の過去を遡るが、やがて事件は自らの過去の因縁をも手繰り寄せてくる―。人間の“業”を圧倒的なスケールで描ききった、巨匠の代表作にして不朽の名作。
著者等紹介
森村誠一[モリムラセイイチ]
1933年熊谷市生まれ。青山学院大学卒。10年に及ぶホテルマン生活を経て作家となる。江戸川乱歩賞・日本推理作家協会賞・角川小説賞・日本ミステリー文学大賞・吉川英治文学賞を受賞。推理小説の他、歴史小説・ドキュメントにも作風を広げている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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茜
119
「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」という西条八十の詩が印象的な映画にもなった小説。母と子の絆の強さが悲哀に変わってしまった悲しい事件の真相でした。母は子を想い、子は母を想うはずだったのに。。。ジョニーは幸せだったのか?複雑な心境です。2022/01/28
アナーキー靴下
78
推理小説は好まず、読むことはないと思っていた著者だったが、お気に入りの方の感想に惹かれ読んでみると、涙を振り絞られる圧巻の人間ドラマだった。登場人物たちが抱える背景は、一つ一つ取ってみれば陳腐とさえ思えるストーリーである。しかしだからこそ陳腐さに逃げ込んでしまう人間の弱さ、悲しさを目の当たりにするようで、誰一人悪人と切り捨てられず、彼らの業が折り重なり生まれる重厚なドラマを見守るしかできない。死者の足跡を追うことは変えられない過去のトレースであり、死者は生き残った人間の中で物語として生き続けるのか。傑作。2021/06/16
みっぴー
67
凄い本を読んだときって、どう言葉にしていいのか本当に困ります。捜査小説では松本清張の砂の器を超えるものは存在しないだろうと思っていましたが、この『人間の証明』はそれと同等か、もしくは上をいくかもしれません。エレベーター内で死んだ謎の黒人からストーリーが始まり、複数の目線からストーリーが進行、散りばめられた伏線が芸術的に繋がり、驚愕の真相へ辿り着きます。社会問題へのメッセージも込められており、読んだあとは何かを叫びたくなる衝動を覚えました。素晴らしい作品でした。2016/05/29
びす男
66
森村誠一は、中学の頃によく読んだ作家だった。ドラマ主題歌だった「a place in the sun」が、この物語には本当によく似合っている■会話の説明口調が多かったり、ときどき登場人物が都合良く居合わせたりするのが気になるが、やはり一級品のミステリーだ。社会で失われていこうとしている親子の絆が、事件の解明とともに読者の前に姿を現す■「人間の証明」という王道を行くタイトル、それに負けない主題……。読むにつれて、謎解きの楽しさと時代の流れに対する感慨が同時に押し寄せてくるのである。2019/02/25
どんふぁん
60
2020年4月23日読了。2004年にドラマ化して再注目を浴びた時読みましたが、読書記録がどこかにいってしまったので、再読です。しかし、こんな内容だったかな?と思い出しながらの再読でした。15年も経てば覚えていないものだな。人間の最後は心に語り掛けること。ということでしょうか。拙い読解力で申し訳ありません。私はどんな悪人でも心の奥底は人間の心が宿っていると思ってましたが、最近の人間は宿ってない人もいるような気がします。2020/04/23