出版社内容情報
鬼とは見えぬもの。鬼とは隠れたるもの。魅入られる人の裡に、鬼はいる。愛とは情欲である。執着に溺れ、永遠に煩悩の虜になる。それを――鬼と云うのだ。九篇の鬼気迫る物語を収めた「 」談シリーズ第四弾。
内容説明
愛、絆、情―すなわち執着は、人を鬼と成す。人は人を慈しみ、嫉妬し、畏れをいだく。その思いが強ければ強いほどに。“生と死”“人と鬼”の狭間を描く、京極小説の神髄。「」談シリーズ第四弾となる、鬼気迫る短篇集。
著者等紹介
京極夏彦[キョウゴクナツヒコ]
1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家、全日本妖怪推進委員会肝煎。94年、『姑獲鳥の夏』でデビューする。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
134
タイトル、文章、装幀いずれも京極夏彦ワールドを構成しています。こうした連作・短編集も悪くないですが、京極堂、榎木津らが活躍するお弁当箱のような分厚い「百鬼夜行シリーズ」の新作が出ることを期待しています。2015/04/17
紅はこべ
131
何かに執着することが鬼ならば、人間は生まれながらにして、生きている限り、鬼なのだろう。木原敏江の『夢の碑』シリーズを思い出した。「鬼景」は怖かった。営繕屋を呼ぶべき?「鬼交」は京極さんにしては珍しくエロティック。「鬼慕」はオチが読めた。「鬼情」は実験的表記法。語り手の性別が読み進むまで判明しなかった作品が多かった。2015/05/14
ケイ
110
そろそろ暑いけれど、夜はまだ肌寒いこの5月より、蒸し暑い嫌な汗をかく夏にぴったりな、ゾッとするお話たち。鬼はいるのか、人が鬼になるのか。妄執は人の心に鬼を棲まわせ、人を鬼に変えていく。とても幻想的な『鬼交』の、ぞぞっとする怪しさと、『鬼縁』の父と弟と娘の時代を超えた怨念がとても良かった。良かったというより、怖かったと言うべきかもしれないが。2015/05/24
tama
106
図書館本 新刊案内で 予約した時、既に二人待ちだったが意外と早く順番が来た。ちゃんと読んだんだな。いや、ときどき山ほど持って帰る人がいるんだが、あれで期限一杯手元に置きっぱにされたらたまらんし。で、京極調、出てますねー。言葉のトーンがじわっと効いてくる、じっとりした嫌な感じは健在。こうでなくちゃ。鬼景、鬼気は怖い。ゆっくり積み上げてって、ぐわっといきなり来る。特に鬼気は、ああ思ったとき鬼があいつに半分入ったんだろうな。ラスト鬼神は悲しくて寂して泣けてきた。2015/05/15
優希
98
じわじわと恐怖が襲ってくるようでした。「鬼」を語る短編集。人の心には鬼が巣食っていることを気付かされたような気分です。執着や妬みなどの感情が人を鬼へと化してしまうのですね。不気味さがない分、ストレートに怖いという印象を受けました。人は鬼になりそうなわずかな時間があって、そこに何かが入り込むことで鬼になってしまうのかなとぼんやり考えました。鬼になぞらえた人の想いは醜いものです。2017/07/19