内容説明
世界的に流行した新型ウイルスは食物連鎖で多様な生物に感染し、爆発的な数の死者をもたらした。ヒトにのみ有効な抗ウイルス薬を開発した人類は、安全な食料の確保のため、人間のクローンを食用に飼育するようになる。食用クローン人間の飼育施設で働く和志は、自宅で自らのクローンを違法に育てていた。ある日、首なしで出荷されたはずのクローン人間の商品ケースから、生首が発見される事件が発生する。和志は事件の容疑者とされるが、それは壮大な悪夢のはじまりに過ぎなかった―。異形の世界で展開される精密でロジカルな推理劇。第34回横溝正史ミステリ大賞最終選考会で物議をかもした衝撃の本格ミステリ、解禁。
著者等紹介
白井智之[シライトモユキ]
1990年、千葉県印西市生まれ。東北大学法学部卒業、会社員。在学中はSF・推理小説研究会に所属。『人間の顔は食べづらい』が第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補作となり、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
215
「2014年」刊行の、白井智之デビュー作。新型コロナ(!)のパンデミックによって人類は激減し、生き延びた者も肉食由来で感染してしまう事を恐れての人類総ベジタリアン時代を経て、新薬の開発で人間だけはウィルスに感染しない時代が到来。人間は肉食を求める。結果、何と自分のクローンを培養し、その肉を食す事ができるというイカれた法案が通過してしまい、人間が自分の肉を食べるという世紀末ともいうべき世界が成立。そんな世界で起こった、ある事件の顛末を描く。後半の多重推理はデビュー作から確立されて。絶対、頭おかしいだろう。2025/02/13
starbro
168
横溝正史ミステリー大賞というよりも日本ホラー小説大賞という気もしますが、荒削りながらもパンク・ホラー・ミステリーという感じで結構楽しめました。グロテスクなクローン人間のようですが、意外とパーマンのコピーロボットのようでもあり、結構ユーモラスな感じもしました。次回作以降に期待したいと思います!2015/01/19
nobby
138
いやはや『人間の顔は食べづらい』ということは他の部位は食べるんだ…この驚愕背景には、新型コロナウィルス流行で、あらゆる魚肉類摂取を失った日本人が行き着いたのは自らのヒトクローンを食らうこと…うーん、歯車違えると現実にもなりそうな世界がスゴい!食肉シーンはないが、凶暴なグロシーンはやっぱり苦手…こんな突飛な設定ながら、物語はしっかりミステリ楽しめる。思わせぶりな事柄からの予測も楽しみつつ終盤での二転三転はお見事!真相明かされてから気付く細かな伏線にもニヤリ♪そしてラストでSF的な恐怖にゾッとするのもお好み。2018/10/03
モルク
113
インパクトのある題名、おどろおどろしい表紙、そして…かつてあまり読んだことがないような内容。近未来において新型ウイルスにより多くの生物学感染、それを食した人間も多数の死者が出たことで肉類からたんぱく質などを採ることができなくなった。そこで考えられたのが安全に培養されたクローン人間を食すという「食人法」であった。国内外からの批判反対の中日本政府はクローン人間を作りそれを食用に処理する工場を容認する。そして殺人事件との関係。結末は想像通りであったが、AIが人間の領域を侵食するようにそのうちクローンも、まさか…2017/12/20
aquamarine
82
クローン人間を合法的に食す時代というだけで読めない方もいるでしょう。食べてるシーンはほぼありませんがグロテスクな描写は多々あります。でもミステリとしてしっかり考えられて良くできてると思います。後半のリーダビリティは大したもので、ミスリードに引っ張られ、たくさんの伏線に指摘されるまで気づかず、作者の期待通りに振り回されて驚いた私は、話の作りでは横溝正史ミステリ大賞での大賞作(本作は最終候補)より好きかもしれません。とはいえ正直いろいろなところに甘さも感じられますので、それらを消化した次作に期待しています。2015/02/12