内容説明
今日も「きまり屋」には、奉公人を雇いたい者、雇われたい者がひきもきらずやって来る。それでも、面倒が起きると助っ人として駆り出されるのは、決まっておふく。色気より喰い気、働きもので気立てのよいおふくは、金に渋い大将、内証に構わない女将、自分の弱さを売り物にする座頭、我侭妻に威張りん坊亭主…揃いもそろって偏屈な雇い主たちに憤慨したり閉口したり、時に同情したり。やり切れぬ思いをこらえながらも、様々な事情を抱えた人々と接するうち、おふくは姿をくらました夫への未練にも、自然と区切りをつけてゆく―。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
1949年、函館市生まれ。函館大谷女子短大卒業。95年「幻の声」でオール讀物新人賞を受賞し、デビュー。2000年『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞、01年には『余寒の雪』で中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Lara
80
2作品目の宇江佐真理氏の本。奉公先のお金を持ち出し、行方不明になった夫とは離縁し、実家の「口入れ稼業」を手伝う「おふく」25才。6短編集で、6つの奉公先へ派遣される。奉公先で、それぞれの事情に遭遇しても、自分なりの意見を言う、正義感というか、正しいと思う道を進む。別れた夫、「勇次」と復縁なるかとも思ったが、結局そのまま別れを決めて、前に進む。元気印の「おふく」さん、奮闘記でした。2020/08/01
ねむねむあくび♪
80
図書館の本。他の、若い作家さんの時代物と続けて読んだせたいか、余計に宇江佐さんが沁みました。若い作家さんの作品もフレッシュで大満足だったのですが。若い作家さんの作品は、豊作の年の新茶のような、すっきりしつつも福福とした幸せな味わいなら、宇江佐さんの作品は緑茶…、苦味も渋味もある、奥行きのある深蒸し茶のような味わいで(⌒‐⌒)。おふくが女中奉公の度に味わうほろ苦さと、たまに登場する江戸の和菓子を食べる場面のコントラストが良い案配で、さすがは宇江佐さん、旨いなぁ~と唸らされました(ノ´∀`*)良かったです!!2016/04/17
ぶんこ
80
人材派遣は昭和の後半の新しい働き方だと思っていましたが、江戸時代にもありましたね。 短期の助っ人として駆り出された先での諸々が、まさに「家政婦は見た」なので、ちょっと笑ってしまいました。 短期だから我慢できるというのも有りでしょうか。 呆れるような人々に驚きです。 給金を払わないという発想が不思議。 おふくさんが食いしん坊なところが好きでした。 イライラ、クヨクヨは美味しい物で(あっちいけポイ!)。 おかよさんが幸せになってて欲しいです。2015/12/13
も
58
伯父と父が営む「きまり屋」。出戻りのおふくは短期の注文に応えるために様々なところへ女中として奉公します。突然姿を眩ませた夫の勇次を5年経ったいまも忘れられずにいる。そんなほろにがな状況でもごはん3膳は朝飯前のおふく。食いしん坊だけれどどんな奉公先でもよく働くし、すごく前向きな姿がすきでした。もう少し先も見てみたかったかな。2016/07/26
ひさか
49
2014年7月刊。野性時代2012年11月号〜2014年7月号の初出のものに加筆修正した6編の連作短編。家業の口入れ屋のピンチヒッターとして働くおふくのお話。女中奉公を通して日常的な暮らしの問題が興味深く語られ、進んで行く。ハッピーエンドなお話が楽しい。2015/01/14