内容説明
明治三十八年、浪漫主義華やかなりし頃、一人の天才詩人が颯爽と詩壇に登場した。熱烈な賞賛をあびた詩集『あこがれ』、作者は岩手県渋民村の青年・石川啄木。青春の歓喜や孤独を歌った二十歳の若者は、しかし故郷を追われ、終わりなき漂泊の旅に出る…。その『あこがれ』から、傑作の誉れ高い晩年の詩稿ノート『呼子と口笛』まで、生涯にわたる数々の詩の中から精選した、啄木詩集の決定版。
目次
詩集『あこがれ』(沈める鐘《序詩》;杜に立ちて;白羽の鵠船 ほか)
『あこがれ』以後(古苑;卯月の夜半;よみがへれ ほか)
詩稿ノート『呼子と口笛』(はてしなき議論の後;ココアのひと匙;激論 ほか)
感想・レビュー
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nobody
19
樋口一葉の著作には文語体で出す意義が大いにあるが、本書にはない。本書を読むよりは、『源氏物語』を原語で、聖書を英訳で、ノストラダムスの詩を翻訳で読む方が意義がある。文意が掴めぬどころか単重複文構造すら判然としない(助詞「に」「と」のクセのある用法が一因)。「詩集『あこがれ』」は取り付く島もなく「『あこがれ』以後」も相当なもので、最後の僅か20ページの「詩稿ノート『呼子と口笛』」でようやく「悲しき玩具」の明快性に再会できる。解説子俵万智も「『あこがれ』は、肩に思いきり力の入った詩集だ」「けれど、詩を読む一人2020/05/30
東京湾
6
「あこがれ浄きを花靄匂ふと見て、二人し抱けば、地の事破壊のあとも追ひ来し理想の影ぞとほゝゑまるる」燦々と輝く青き魂の火照り、荘厳に迸る若き情熱。石川啄木の詩作の嚆矢である散文詩集。後の『一握の砂』に見える愁いや哀切などとは対極の、豪奢なまでに叙情的な愛と情熱の焦がれに満ち満ちており、少々面食らった。しかし併録された「呼子と口笛」で語られるテロリストの悲しみなどは「あこがれ」とはうって変わった切実さがあり、啄木の詩作が変化する兆しを垣間見ることができる。2020/01/21
mayuri(Toli)
1
石川啄木の詩をきちんと読むのははじめてな気がする。詩集あこがれのなんという清美な浪漫に溢れていることか。読んだ時の衝撃は一寸言葉にできない。啄木がこんなに素敵だったなんて。夢中になってしまいそうだ。何度も読み返したい。2021/06/28
鑑真@本の虫
1
石川啄木ワールドの始まり。まさしく魂や愛の籠った詞が多いように感じた。2012/09/01