内容説明
ボーレンスフルトの閘門で、全裸女性の絞殺死体が見つかった。身元不明の遺体には誰からの問い合わせもなく、事件は膠着状態に陥ったかに見えた時、アメリカの警察から一通の電報が届いた。「ソレハコッチノサガシテイルオンナダ」。ロセアンナ・マッグロー、27歳。この知らせをきっかけに、刑事マルティン・ベックは、ロセアンナと関係をもった男達についての証言を探ってゆくが―。警察小説の金字塔シリーズ・第一作。
著者等紹介
シューヴァル,マイ[シューヴァル,マイ] [Sj¨owall,Maj]
1935年、ストックホルム生まれ。雑誌記者・編集者を経て65年から10年間ペール・ヴァールーと“マルティン・ベック”シリーズを10作書き上げる
ヴァールー,ペール[ヴァールー,ペール] [Wahl¨o¨o,Per]
1926年、スウェーデン南部西海岸ハランド県ツールー生まれ。新聞記者を経て作家生活に。62年、執筆中の本の編集者マイ・シューヴァルと出会い、63年から共同生活。当時彼は結婚していたがその後離婚が成立。マイとのあいだに男子が二人いる。75年、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
439
刑事マルティン・ベックのシリーズ第1弾。本書が執筆されたのは1964年なので、スウェーデンばかりではなく、北欧ミステリーの草分け的な存在。タイトルにマルティン・ベックが冠されているわりには彼の活躍場面はさほど目立ったものではない。むしろ、本庁とモーターラ警察、さらにはネブラスカ州リンカーン署の刑事とも協働しつつ殺人捜査を地道に進めていく典型的な警察小説である。こうしたスーパーマン的な探偵が存在しないことこそが、まさに本シリーズの特徴だろう。ちなみに、マルティン・ベックその人も私生活では冴えない中年男だ。2020/05/07
Kircheis
410
★★★☆☆ 北欧ミステリの嚆矢とるマルティン・ベックシリーズの第1作目。 警察官の捜査の実態を詳細に描くシリーズで、犯人当てより警察組織がどのように協力し合い、事件を解決していくのかを描写することに主眼が置かれている。 犯行は残虐で犯人もサイコパスだが、事件の衝撃をメインにせず、女性の自立や結婚関係のあり方など現代的な問題を提起していくスタイルは実に骨太である。 なお『悲しみのイレーヌ』で犯人に模倣された作品の1つとなっている。2024/02/09
修一朗
142
警察小説の古典と称えられるシリーズに長らく手を出せずにいたが今はいい機会。50年前の作品だが2012年から直訳版が出てます。都合上高見本柳沢本の混合で読みます。手がかりのない捜査は前半全く進まず,現場の捜査は逐一描くし,組織捜査は堅実だ。スタンダードですねぇ。御当地の気候はいいのに雰囲気は陰鬱でやっぱり家庭はうまくいかない,それからグローバル。イメージ通りの北欧小説です。マルティン・ベックは犯人のプロファイルを思い描いてから捕り物に臨むところが特徴だ。次「煙に消えた男」へ。「笑う警官」までは行きますぜ。2020/05/19
佐々陽太朗(K.Tsubota)
131
本作の主役はマルティン・ベックではなく、導入部分で死体となって登場したロセアンナである。発刊当時としては最も進歩的だといえる女性として描かれている。知的で古くからのキリスト教的束縛や固定観念から解放されており、あくまで論理的に正しいことを信奉し自分に正直に自立と自由を重んじる女性。この女性像があったればこそ、第1作目にして絶大な人気を博したのだろう。しかし今となっては「ウーマンリブ」という言葉も死語となっている。その意味で本書は既に古典的存在となっており、味わい深く読めるのもおそらく私の世代が最後だろう。2017/09/13
ケイ
122
スウェーデンの登場人物とは言え、名前が馴染みやすいし、主要人物が何人もいないので、話にスッと入り込めた。ストックホルムの三人は個性的で能力の高い警察官。モーターラの警官も、ちょい出のアメリカのカフカも、いい味を出している。1960年代であるゆえに、連絡方法もスムーズにいかないが、その歯がゆさが丁度いい。マルティン・ベックシリーズは10冊もあるのが嬉しいが、現在はまだまだ未訳が多いようだ。ああ、最後までよかったな。 「マルティン・ベックがやってくる~♪」ヘニングマイケルの後書きがあるのも贅沢でいい2016/04/21