内容説明
自然科学の世界に魅了され、将来を嘱望される、若き科学者ヴィクトル・フランケンシュタイン。創出と生命の原因を突き止めた彼は、生命を持たぬものに魂を吹き込むことに成功する。しかし、想像を絶する怪物の姿を目にした途端、恐怖におののきその場から逃げ出してしまう。絶望の淵に突き落とされ、故郷へ戻ったヴィクトルを待ち受けていたものは、自分が創造した怪物の復讐だった。産業革命最盛期に執筆された傑作が甦る。
著者等紹介
シェリー,メアリー[シェリー,メアリー] [Shelley,Mary Wollstonecraft]
1797年、ロンドン生まれ。政治評論家ゴドウィンと女権拡張運動家メアリーの間に生まれる。ゴドウィンと交友のあった詩人シェリーと知り合い、16歳の時に駆け落ちし、彼の先妻の死後1816年、正式に結婚した。詩人バイロンとも交友を持つ。高い知性と鋭い感覚で1818年怪奇小説『フランケンシュタイン』を発表、たちまち大評判となる。夫の死後、彼の詩の編纂に従事する傍ら、『ヴァルパーガ』『最後の人』『ロドア』などの小説を書き続ける
田内志文[タウチシモン]
1974年生まれ。埼玉県出身。翻訳家、文筆家、スヌーカー選手。短編小説等の執筆や朗読も行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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流言
52
怪物とヴィクトル・フランケンシュタイン、どちらの視点で見るかにより印象が著しく異なる。ヴィクトルから見ると不条理な災厄に見舞われる恐怖小説であり、持つ者になってしまった天才の苦悩を描いた作品であるのに対して、怪物くんの視点で見ると虐待から始まる悲哀であり、青い鳥を求め続けた失恋譚である。怪物くんの行動も非難されてしかるべきなのだが、それよりも産まれた怪物を放置してふて寝するわ約束は破るわなんの根拠もなく怪物くんを悪魔だ化物だと非難するヴィクトルの理不尽さが目立つ。技術が倫理を追い越すことの恐怖がテーマか。2016/06/29
みっぴー
52
育児放棄の末にエンドレス追いかけっこ…自分で造った怪物は最後まで面倒みてください。元祖SFとの呼び声高いフランケンシュタイン。数多くのテーマや教訓を内包していますが、自分は〝結局外見が全てなのか?〟ということに重きを置いて読みました。もし怪物が美形なら、博士はそれこそ天使のように可愛がったでしょう。なのに醜い者には愛情も友情も教養も与えられない。これを読めば〝外見なんて関係ない〟なんて陳腐なセリフは吐けなくなります。博士に同情の余地無し。怪物に同情票。2016/02/22
みくろ
40
ずっと読んでみたいと思っていた作品。どの訳で読もうか悩んだ末、表紙が素敵な角川さんで。他の訳は読んでいないので比較できないですが、この角川版で読みにくい等はありませんでした。フランケンシュタインってずっと怪物の方の名前だと思っていたのですが創った科学者の方だったのですね!そしてこの科学者がもう自分勝手で言い訳ばかり。怪物の心理状態に関してはフランケンシュタインとウォルトン氏が語ったもののみ。どちらも怪物本人の視点ではないのでかなりの偏見があり、怪物自身は善の心が本当にあったと思う。切ない話である。2015/10/30
MF
32
暮れに公開されたこの名作の作者を描いた映画『メアリーの総て』の影響か、少し前から取り上げる方々が一気に増えてとても嬉しい! 数年前にディズニーの実写映画『マレフィセント』でオーロラ姫を演じた女優さんが主演をつとめるという映画もなんとか観に行きたい。2019/01/02
MATHILDA&LEON
31
【英ガーディアン紙が選ぶ必読小説(5/1000)】今まで「『フランケンシュタイン』とは、体格は良いが知能は低い怪物の名前」だと思い込んでいたけれど、思いっきり間違っていた。怪物を生んでしまった博士の名前だったのか。それにしても、怪物のなんと哀しい運命か。博士の考え方には最初は怒りを禁じ得なかったが、読み進めて行くにつれ、彼の悔恨と苦しみが少しずつ分かってきて、読むのが辛くなるほど。怪物は怪物で、人間と仲良くなりたいと願うのに…。なんて悲しい物語なのだろう。2015/04/07