内容説明
「あなた、百舌鳥魔先生は本当に凄いのよ!」妻が始めた習い事は、前例のない芸術らしい。言葉では説明できないので、とにかく見てほしいという。翌日、家に帰ると、妻がペットの熱帯魚を刺身にしてしまっていた。だが、魚は身を削がれたまま水槽の中を泳ぎ続けていたのだ!妻が崇める異様な“芸術”は、さらに過激になり…(表題作)。他に初期の名作と名高い「兆」も収録。生と死の境界をグロテスクに描き出す極彩色の7編!
著者等紹介
小林泰三[コバヤシヤスミ]
1962年京都府生まれ。大阪大学基礎工学部卒業、同大学院修了。95年『玩具修理者』で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞してデビュー。98年『海を見る人』で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2012年『天獄と地国』で第43回星雲賞日本長編部門を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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徒花
263
SFからホラー(昭和、平成)、ダークファンタジーまで、1冊でいろいろな泰三ちゃんを堪能できる短編集。とくに傑作なのは皮肉もきかせた冒頭の『ショグゴス』。いまだかつてこんなに気持ち悪く、吐き気を催すようなロボットは見たことがない。ここらへんは泰三ちゃんの真骨頂。あとは、最後の『百舌鳥魔先生のアトリエ』は名作『玩具修理者』をほうふつとさせる秀作。逆に、『試作品三号』はちょっとね……好きなのはわかるけど、どうしても白けてしまうからやめた方がいいのではないか。とはいえ、泰三ちゃん入門書としてピッタリな一冊。2016/02/23
みくろ
40
7作のホラー短編集。書きたい事は分かるのだが、力がそこまで及んでいない感じです。設定が面白い作品もあるだけに残念。台詞に問題があるのかな。ぶっ飛んだ人物を想定しているのだろうが、やたら説明的であったり突拍子もない発言が逆にイタイ。この7作を読むと長(中)編より短編向きの作家さんだなと思いました。「兆」がいまいちなので…。個人的には「朱雀の池」が一番面白かったです。「ショグゴス」「密やかな趣味」「試作品三号」がSFホラーで、「首なし」「百舌鳥魔先生のアトリエ」が視覚的インパクトのあるグロホラーといった感じ。2015/11/15
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39
グロテスクで奇妙で、だけどなぜかどの作品も美しいと感じてしまう。小林さんの作品の中では脳髄工場がかなり好きだったのですが、本作はそれ以上にドンピシャで好みでした。どれも様々な世界観の中で狂気と美しさが兼ねそなえられていて、本当に素晴らしいです。どの作品も良かったのですが、やはり1番良かったのはジョグゴスと密やかな趣味ですかね。SFの要素が混じっていてジョグゴスなんかはちょっとした近未来だと思うと想像してみるとゾクゾクします。密やかな趣味はオチはわかりやすかったですが、思い込みの強さに寒気がしましたw2014/03/20
まえすとろ
32
長らく絶版になっていた小林泰三の初期作品を含む傑作短編5編を再録、新たに2編の描き下ろしを加えたグロテスクホラー短編集は初球からいきなりストレート。南極での戦闘、地底に眠っていた生物、海百合っと読めば、≪その方面≫のファンならば、もうニヤリが止まらない第1話「ショグゴス」 ファンサービスを兼ねた江戸川乱歩真っ青のエログロ描き下ろし短編の第2話「首なし」、初期の短編で傑作の誉れ高い正統派ホラーの第3話「兆 KIZASI」↓ 2015/03/16
みや
29
肉体と精神の狭間、生と死の境界を描くホラー短編7作収録。人体の破損や改造など、普段なら大好きなスプラッタな話も多いのに、なぜだか興奮できなかった。相性の問題なのか、今の私の精神状態によるものなのか。肉体を生きたまま切り刻んで芸術作品に仕立て上げる表題作、恋人として購入したアンドロイドを痛めつける「密やかな趣味」は特に、いつもであれば絶対に好きな設定、展開だと思う。なぜこんなにも冷めながら読んでしまったのかが自分でも分からない。残念至極。小林先生の他作品を読んでから、また挑戦したい。絶対に嫌いではないはず。2018/02/23