出版社内容情報
『ラブレス』『ターミナル』の原点がここに――人の背負う業の哀しみ。
寄せては返す波のような欲望にいっとき身を任せ、どうしようもない淋しさを封じ込めようとする男と女。安らぎを切望しながら寄るべなくさまよう孤独な魂のありようを、北海道の風景に託して叙情豊かに謳いあげる。
内容説明
親から継いだ牧場で黙々と牛の世話をする秀一は、三十歳になるまで女を抱いたことがない。そんな彼が、嫁来い運動で中国から迎え入れた花海とかよわす、言葉にならない想いとは―(「波に咲く」)。寄せては返す波のような欲望にいっとき身を任せ、どうしようもない淋しさを封じ込めようとする男と女。安らぎを切望しながら寄るべなくさまよう孤独な魂のありようを、北海道の風景に託して叙情豊かに謳いあげる、傑作短篇集。
著者等紹介
桜木紫乃[サクラギシノ]
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、初の単行本『氷平線』が新聞書評等で絶賛される。12年『ラブレス』で直木賞、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞の候補となり話題を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
333
冒頭の、酪農農家に来た中国人のお嫁さんのお話を読んで「いいぞ、以前読んだ好きだった短編の続編か?」。読み進むにつれ「これ絶対既読っしょ?」ネットで調べてもわからない、、、のでとうとう読了。巻末に「『恋肌』を改題、修正のうえ文庫化」、、、ヤラれた。好きな短編集だからいいけどさ。2018/03/22
夢追人009
179
北の大地に生きる強く逞しい女達の浮き沈みある人生模様を描く桜木紫乃さんの傑作短編集。桜木さんの描くヒロイン達はみんな迷いがなくきっぱりとしていますよね。自らの下した決断に責任を取り後悔せずに今を懸命に生きている男以上の力強さを感じます。みんな十分に聡明で賢いのにどうして自堕落な甲斐性の無い男達に惚れるのかは謎ですが、まあ生まれついての性分なのでしょうね。本書を読んで心に思い浮かんだ2つの歌詞を書きますね。前川清「そして神戸」誰かうまい嘘のつける相手捜すのよ、さだまさし「向い風」倖せの形くらい私に決めさせて2019/06/07
おしゃべりメガネ
163
こちらも8年ぶりの再読です。最初の話だけは覚えていましたが、正直他の話はやっぱり忘れてしまっていました。しかし、改めて読み直すと桜木さんが本当にステキな文章を用いて北海道を描いているなぁと感じます。登場する人物達もそれぞれに魅力的なのですが、やはり桜木さんの真骨頂は寂しく、儚げでありながら芸術のような自然豊かな北海道を描写するコトにあるんだと思います。そして何より'生きていく'と決めた女性のその前向きであり、開き直りなスタイルに惚れ惚れさせられます。こういう短編集は時間をおいて何度も読みたくなりますね。2018/03/31
やっさん
125
★★★☆ 冒頭2ページで気付いた。「恋肌」の改題だと。でも新作も加わってるみたいだし、好きな作品だから全て読んだ。こんなにも退廃的で未来を感じないセックスを描ける作家、紫乃先生以外にいるのだろうか。2021/01/20
ゴンゾウ@新潮部
125
桜木紫乃さんの作品には独白の空気感がある。登場人物は孤独で薄幸で霧の中を彷徨っているような不安定さがある。それでも女達は現実を受け入れ男に頼らず自立してたくましく生きようとしている。毎回感じるどんよりとした読後感、でも思わず手にとってしまう魅力がある。2016/05/31