出版社内容情報
ヴィクトル・ユゴー[ヴィクトルユゴー]
著・文・その他
永山 篤一[ナガヤマ トクイチ]
翻訳
内容説明
貧しいジャン・ヴァルジャンはパンを盗んだ罪で監獄に送りこまれて十数年ものあいだ苦しみ、さらに出所後も差別に悩まされる。しかし、ある司教に出会ったことで生まれ変わった彼は、まったくちがう人生を歩きはじめる。そして、不幸な美女ファンテーヌと出会い、彼女を救おうとするが、執拗に追いまわすジャヴェール警部が行く手に立ちふさがる。フランス文学の金字塔にして娯楽小説の真髄が、コンパクトな新訳で登場。
著者等紹介
ユゴー,ヴィクトル[ユゴー,ヴィクトル][Hugo,Victor]
1802年生まれ。作家・戯曲家・詩人・政治家。1820年代に国王ルイ18世に認められるなど、詩人として高く評価される。すぐに戯曲や小説も発表するようになるが、政治色が強く物議の的となる。しかし1862年にフランス文学の頂点『レ・ミゼラブル』を発表したことで不動の名声を獲得。政界にも進出したが、複雑な状況により亡命生活を経験している。1885年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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absinthe
154
エンタメ小説の最高峰の一つ?怪力ジャンヴァルジャンの活躍。ラスコーリニコフのようなか弱い人間像と違い、どこかギリシャ神話の神々のような存在感。どこかついていけないところもあるのだが。貧しい人々の苦悩と、人間の底知れない罪深さ。革命の機運高まる当時のパリの様子が活写される。パンを一個盗んだだけ、(あと銀貨一枚?)にしては罪の意識が深すぎる。人間離れした存在だ。下巻へ急げ。2022/11/23
ひらちゃん
73
あれ?読みやすい。昔、家にあった世界文学全集に収められていたものは、長々と説明が多く読みずらかったイメージが…。と思ったら、角川文庫から出てるのは抄訳版なのですね。おかけですっかり物語の世界へすんなり入り込めました。楽しめるならこちらでいいんじゃないかな?「夢やぶれて」を聞きながら下巻にまいります。2018/02/15
たきすけ
64
世の貧困・無慈悲さからくる差別・腐りゆく精神の本質を突く内容であり、読んでいて実に辛い内容でした。しかし貧富の差から妬む心が生まれるのは事実であり、生まれながらのヒエラルキーに対する登場人物達の生き方・反応はそのままそっくり我々の世界との合わせ鏡なのでしょう。ジャン・ヴァルジャンをはじめとする救いを掴む者・貧困に蝕まれる者・気高き思想を求める者 、、世界は選択と自由に満ち溢れていますが、選択肢すら選べない人々はどうすれば良いのか? この物語の先にある結末を読む為、下巻も読みたいと思います。2016/01/27
Book & Travel
54
言わずと知れた名作の抄訳版。抄訳といってもなかなかの読みごたえだ。パンを盗んだ罪で19年の刑に服したジャン・バルジャン。ミリエル司教の燭台のくだりは昔読んだのを覚えているが、市長になりながら自首する際の葛藤、ファンティーヌやコゼットへの慈愛、そして逃避行と続くドラマチックな展開は殆ど覚えておらず、さすが名作と思いつつ物語に引き込まれた。19世紀フランス社会に巣食う壮絶な貧困とそこから来る人間の卑屈さには辟易するが、当時の人々の価値観が垣間見えるのも面白い。マリウスも登場し、今後の展開も気になるところだ。2018/10/22
さっとる◎
49
人間社会という舞台に立ったことがもうゲームオーバー。そうとしか思えない境遇がある。生活なんかしなくても生きてるだけで腹が減るんだ。労働と引き換えの駄賃は雀の涙、空っぽの腹とは反対に膨れ上がった貧困。ひと切れのパンのために売られる魂。そんな状況で腐らない人間はほとんどいない。無慈悲な出来事がつねに起こり、新しい奈落が生まれるここはレ・ミゼラブル。それでもやっぱり信じたい。人間の良心を、尊い正義を。何回ゲームオーバーしたって、やり直しさせてくれよと果敢に生きるジャン・バルジャン。良心を、信じさせてくれないか。2020/11/14