出版社内容情報
歴史に翻弄された男たちの数奇な運命!岩松改め岩吉、久吉、音吉の3人は、幾多の困難を乗り越え、5年ぶりに日本を目の前にしている。しかし彼らに対する祖国の仕打ちは容赦ないものだった……感動巨編、涙の完結編。
三浦 綾子[ミウラ アヤコ]
著・文・その他
内容説明
ゼネラル・パーマー号でマカオに送り届けられた岩松改め岩吉、久吉、音吉は、祖国の地を踏む日を待ち続けていた。彼らは日本で固く禁じられているキリスト教に出会い理解する中で、過去現在と自分たちを支えてくれた異国の人々の無償の愛に、心から感謝するのだった。そしてようやく日本を目前にする日がくるが、祖国は彼らに冷たすぎる仕打ちをした…。運命に翻弄される人間の真の強さを問う壮大な物語、涙の完結巻。
著者等紹介
三浦綾子[ミウラアヤコ]
1922年、北海道旭川市生まれ。旭川市立高女卒。59年、三浦光世と結婚。64年、朝日新聞社の懸賞小説に『氷点』が入選、国民的ベストセラーとなる。人間の愛、原罪、祈りなどをテーマに、『塩狩峠』『銃口』『母』など多数の著書を遺した。99年、77歳で逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
88
哀しい結末にただ辛かったです。祖国の地に戻ることを夢見ていた岩松改め岩吉、久吉、音吉。異国の地での無償の愛とキリスト教との出会いは彼らにとってとても大きなことだったに違いありません。やがて日本に帰国する願いが叶うと思ったものの、祖国の冷たい仕打ちが酷い。外国船というだけで抗戦体制に入ったのが想像もつかない結末でした。運命の皮肉さを感じずにはいられませんでした。2016/02/17
piro
42
ロンドンを後にした音吉らは半年の航海の末マカオに到着。1年半の足止めの後、漸くモリソン号で日本に向けて出航した彼らですが、思いもよらない冷たい仕打ちで迎えられます。個人レベルでは音吉の様な庶民に至るまで聡明さを持っていながら、国家レベルでは、鎖国政策の下、人道上の配慮も無く頑な対応しか出来なかったこの国はやはり遅れた国だったのでしょう。怒りを通り越して哀しみを感じました。一方で世界各地で音吉達を助けた人々の慈愛の念には救われた思い。彼らに「心の鎖国」は無く、人としての心が尊重されていた事は素晴らしい。2020/12/12
ソーダポップ
40
天保三年に遠州灘で遭難した岩松(岩吉)久吉、音吉の三人は、五年にわたる艱難辛苦の末に、日本の浦賀に到着する。いよいよ故郷日本の地を踏めることを期待する三人だったが、祖国は彼らに冷たい仕打ちをする…。この著書の題名「海嶺(かいれい)」を調べてみると「大洋底に聳える山脈状の高まり、海底山脈」とあり、ほとんど人目にふれない庶民の生き様に似ていて、例え人目にふれずとも大海の底には厳然と聳える山が静まりかえっていると理解しました。鎖国によって翻弄された三人の生きることの厳しさを問いかける感動の著書でした。2021/07/14
有
28
下巻が1番苦しかった。苦しい思いをして読んできて、これ。彼等のその後を思えば思うほど、幸せとは、故郷とはと考え込んでしまう。罪なき人が石を投げればいい。私も石は投げられない。2018/04/12
まーみーよー
27
力作である。力作なんだが、下巻は三浦さんが描きたいテーマとしてキリスト教に音吉達が触れていく過程と聖書和訳に重きを置きすぎていて、その分彼らの望郷の念や、なかなか帰国できぬ焦燥感などの心情が薄く感じられてしまった。又、幕府のキリスト教禁制がわかりながら礼拝にも付き合い、帰国したら「お上に黙っていたらなんとかなる」という感覚には違和感を感じてしまった。願わくばモリソン号事件の後の音吉達を、後書きではなく、本編に著してほしかった。何にせよモリソン号での音吉達は絶望の気持ちで一杯だったろう。2020/09/16