出版社内容情報
人は罪を許せるのか……時代を超えた感動の名作!
自殺を図った陽子は、命は助かったものの、自分が不倫の末の子として生まれたことを知り逆に苦悩が深まる。潔癖な陽子は、生母・恵子への憎しみを募らせていく……。
内容説明
自分が辻口家を不幸にした殺人犯の子であるとして、自殺をはかった陽子。一命をとりとめ、父・啓造や母・夏枝からすべてを謝罪されたが、自分が不倫の末の子であったという事実は潔癖な陽子を苦しめた。陽子は実母・恵子への憎しみを募らせていく。一方、兄・徹はその恵子に会い、彼女なりの苦しみを知ることになる―。大ベストセラー『氷点』のその後、“真実”を前に苦悩する人々を描いた珠玉のドラマ。
著者等紹介
三浦綾子[ミウラアヤコ]
1922年、北海道旭川市生まれ。旭川市立高女卒。59年、三浦光世と結婚。64年、朝日新聞社の懸賞小説に『氷点』が入選、国民的ベストセラーとなる。99年、77歳で逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナマアタタカイカタタタキキ
119
凍結したと思われた物語が融解し、新たに広がり始めた。動的な展開が散見されるにもかかわらず相変わらず静的な印象をもたらすのは、個人の深い瞑想状態のような独白があるわけではないにしろ、各々の心の動きを満遍なく俯瞰するような地の文が続くからか。そして由香子との再会シーン、彼女の諦観的な物言いには刺さるものがあった。北の大地を彷徨ったであろう彼女の10年はここまでには描かれていないが、彼女もまた画面外で生きてきたのだ。恵子も然り、陽子のような高潔さを持った人間だけが、罪を自覚し傷を負うのではない…ひとまず下巻へ。2021/05/06
ゴンゾウ@新潮部
109
人間の罪深さを感じる。嫉妬、疑念、復讐様々な罪を犯してしまう。その罪の重さに苦しみ後悔する。この作品にもたくさんの罪がある。その罪を人は許せるのだろか。とても深い作品。陽子の頑な過ぎる潔癖さに救われる。2017/01/29
のり
106
前作を読んでから時があきすぎ、ラストを読み直ししてから本書を手にとる。陽子の自殺未遂から、辻口家を取り巻く環境が少しずつ変化しつつある。出生の真実を知った陽子は心を閉ざし、考え方や人への接し方が平板になっていく。相変わらず、村井と夏枝には嫌悪感が募る。辻口にしろ、いまいち態度が定まらず煩悶する日々。育ての家族と実の親の存在を知った今、陽子はどこに向かって生きていくのか…下巻へ。2017/04/09
優希
97
『氷点』を読んだのはかなり前なのに、読み始めるとドロドロとした人間模様の世界へと瞬く間に入り込んでしまいました。陽子の自殺未遂が一命をとりとめたことで、周りから謝罪されても、自分が不倫の末に生まれた娘であることに苦しむのには変わりない純潔さに重さを感じずにはいられませんでした。憎しみと苦しみの真実が人々を苦悩させているのがズッシリと響いてきます。心が潔癖な彼らだからこそ、事実がひとつ突きつけられるだけで痛みになるのでしょう。彼らは神の前で赦されるのでしょうか。下巻にいきます。2015/08/05
aoringo
84
自分の生い立ちに、若さ故の潔癖さで嫌う陽子。一命をとりとめたのに虚無感に襲われる姿に複雑な気持ちにさせられた。殺人犯の娘、不義の末の子。この世に産んでもらえただけで有り難いと思えとは簡単には言えないよねぇ...下巻へ続く。2021/06/11