出版社内容情報
死線をさまよい続ける極限状態で、人間が人間らしくあることは可能なのか―過酷な自然、重い疲労、マラリアの蔓延――。冷徹なまでのリアリズムで、第二次世界大戦時のニューギニアの兵站線上から、名も無き兵隊たちのドラマを描きだした、小説の極致!
古処 誠二[コドコロ セイジ]
著・文・その他
角川書店装丁室 國枝達也[カドカワショテンソウテイシツ クニエダタツヤ]
著・文・その他
内容説明
飢えとマラリア、過酷な山越えのための想像を絶する疲労の中、困難な道を進む兵隊たち。摩耗する心と体。俺はこのニューギニアの地に捨てて行かれるのか―。味方同士で疑心暗鬼に陥る隊では不信が不正を招き、不正が荒廃をはびこらせる。そんな極限状態で人間が人間らしくあることは果たして可能なのか。第二次大戦の兵站線上から名もなき兵隊たちの人間ドラマを冷徹なリアリズムであぶりだす。
著者等紹介
古処誠二[コドコロセイジ]
1970年福岡県生まれ。2010年、第3回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
koba
87
★★☆☆☆2015/03/29
nnpusnsn1945
43
全ての話は独立した短編だが、どれもニューギニア戦線を部隊にしている。戦闘は少ないが、そのかわり伝染病が深刻である。保坂正康氏の解説も良い。感情的ではないが、容赦なき現実を描写できた作品である。古処誠二氏の作品で最初に読むにはおすすめ。2021/02/20
モルワイデ鮒
13
第二次世界大戦下のニューギニア9つの短編。派手な戦闘と結末ではない極限状態の人間ドラマは、いつものミステリ脳で読むと、ここで終わり?みたいなピンとこないものも一つ二つ。戦場の馬について考えたことない。戦傷者と戦病者。敵軍の顔。深く読み込むとずしりと重たい。古処誠二さんの戦争小説を読むのは3作目だが、ルソン島もビルマも飢えとマラリアでずっとしんどい。絶望感が止め処無い。2025/05/01
ネムル
12
戦争は茶番劇である。こうした認識が半ば共通化したなかでの個人の策謀、疑心、生存欲求と諦観。茶番化した戦争にはミステリの形式がよく合う。特に「糊塗」「銃後からの手紙」がよい。2019/06/10
リュウジ
11
★3 歩兵だけではない。その戦場には工兵も駄馬兵も敵兵も病兵も傷兵もいた。ニューギニアが舞台の短編が9つ。作者は1970年生まれ。あの戦争を知らないからこそ生まれる視点は哲学的ですらある。「(進んだ兵器を有しながら)なぜか食い物に困っている」。「勝手に上陸して、勝手に腹を空かせている」。「多かれ少なかれ誰もがいまだに生きている自分を恨んでいた」。彼らはなぜ戦っているのかさえ見失う。生きて帰る(またはここで死ぬ)ことが戦いの目的となる。ニューギニアの戦いは終戦の日まで続き死んだ兵は13万とも15万ともいう。2022/11/08