出版社内容情報
安吾の傑作推理小説。幻の捕物帖が今、よみがえる!
文明開化の明治の世に次々起こる怪事件。その謎を鮮やかに解くのは英傑・勝海舟と青年探偵・結城新十郎。果たしてどちらの推理が的を射ているのか?
内容説明
明治の世に起こる怪事件の数々を、青年探偵・結城新十郎が快刀乱麻を断つ名推理で真相に迫る!怪しい新興宗教団体の連続変死事件の謎を追う「魔教の怪」、衆人環視の中、燃えさかる密室から人が消える「赤罠」、神の怒りに触れて死んだ男の隠された過去を明らかにする「狼大明神」、バラバラになった死体から意外な被害者と犯人を推理する「トンビ男」など全12篇。文豪・坂口安吾の幻の傑作推理連作集、堂々の完結。
著者等紹介
坂口安吾[サカグチアンゴ]
1906年(明治39年)、新潟生まれ。東洋大学印度哲学倫理学科卒業。46年に発表した「堕落論」が反響を呼び、続く「白痴」によって太宰治、織田作之助らとともに新文学の旗手として文壇に特異な地位を築く。他に『桜の森の満開の下』等。55年、脳出血により48歳で急逝(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シ也
33
新興宗教による事件を描いた日本のミステリーはこれが最初なのではないだろうかと考えてしまった「魔教の怪」が一番面白かった。殺人の手口の残忍さなど、群を抜いて面白い。勝海舟の推理パートが減り、文章がちと読みにくくなったのが残念。太宰治や織田作之助等々、もう少しこの時代の作家たちの文章になれてまた読んでみたい2016/04/11
まめこ
24
★★★☆☆文明の灯りに追いやられた闇に息づく殺意。肝臓喪失死体とカケコミ教「魔教の怪」、葬式還暦祝いとヘップリコ「赤罠」、女相撲と恐喝殺人「乞食男爵」、バラバラ死体とタケノコメシ「トンビ男」など真相は正直そんなんありか…というものばかり(笑)。しかし、闇を払われた怪事件と本筋の事件との絡みが面白い。ただ、楽しみにしていた勝先生の出番があまりなく迷推理も何だかしおたれているのが寂しいなぁ2022/02/13
そり
16
「当時の風俗がわからない」「登場人物が多い」等読みにくさがあるらしい。だけど読みにくくても、そこには確かな面白さがあるのだから堪えて欲しい。未知はスラスラ読めない代わりに、既知よりも新鮮さを味わえるはずだから。▼犯行動機が財産目的というのがままある。それは舞台が明治時代で、自分の知らぬ環境だからと納得してしまう。機会を逃さない強かさ、欲に溺れてしまう弱さ。強さともとれる弱さともとれる人間味、犯人になんだか愛らしさを感じる。「人は鬼になりやすい」と探偵が言った。著者安吾の目に映っていた人の姿に思いを馳せる。2013/04/16
花乃雪音
14
前巻では勝海舟が迷推理を披露して結城新十郎が名推理を披露した後、勝海舟が言い訳するワンパターンな展開だったが本巻ではこのワンパターンから脱してしるものの、そうなると物足りなさを感じてしまう。タイトルに難はあるが「家族は六人・目一ツ半」やバラバラ殺人のホワイダニット「トンビ男」が短編ならではの作品だった。2020/05/31
冬見
11
前作に引き続き、全体として短編ながら登場人物が多く、人間関係も複雑に入り組んでいる作品が多い。そういう点で読みづらさはあるが、一方でその人間関係の複雑さが生み出す面白さもあり表裏一体。相関図を書けば読解の助けになり、読書の集中力を人間関係を覚える点ではなく複雑な人間関係によって生み出されるドラマを楽しむ方へ割くことができるが、この長さの短編小説集で毎度それをやるのはなかなか消費カロリーが高くもあり。慣れの問題なのか次第に読みやすくなりはした。探偵ものとして楽しく読んだ。「冷笑鬼」「赤罠」はかなり好き。2021/12/31