出版社内容情報
【ひとは社会の中の一人として、もう一度「生まれる」】
哲学から映画、マンガなど大衆文化を渉猟し、戦後日本を思索し続けた思想家、鶴見俊輔。彼が現代人の「生き方」を問い直すために選んだのは、誰もが認める偉人ではなく、社会の周縁で、時代に揉まれながら実直に生き抜いた5人の日本人だった。明治以前に米へと越境し、日本を相対化した中浜万次郎、町村を見つめ続けた田中正造、敗北を直感しながら飛び立った林尹夫……彼らの数奇な人生をたどることで、近代日本の相貌が鮮やかに浮かび上がる。
赤川次郎氏の文庫版解説を再録。新書版解説・ブレイディみかこ
【目次】
はじめに
中浜万次郎――行動力にみちた海の男
田中正造――農民の初心をつらぬいた抵抗
横田英子――明治の代表的日本女性
金子ふみ子――無戸籍者として生きる
林尹夫――死を見つめる
本書関連年表
あとがき(1972年)
文庫版あとがき(1994年)
解説にかえて 赤川次郎
新書版解説 ブレイディみかこ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
103
1972年初出の名著が新書化された。「五人の肖像が、明治以降の日本の社会を考える手がかりとなることを望む」と鶴見先生が選んだのは、中浜万次郎/田中正造/横田英子/金子ふみ子/林尹夫。現代人は、彼らのことをどれだけ知っているのだろう。万次郎の人間の対等性、田中正造の地べたのアナキズム、横田英子の凛とした精神、金子ふみ子の卑屈にならない強さ、林尹夫の儚さ……現代社会が見失ったものが、五人の肖像の中に輝いている。文庫版の赤川次郎さんの解説、そして、今回新しく書かれたブレイディみかこさんの解説が、これまた秀逸。2025/07/11
マウンテンゴリラ
2
本書で描かれる5人の日本人のうち、個人的に名前を知っていたのは、中浜万次郎と田中正造の2名、おぼろげながら名前だけは聞いたことがあるというのが、金子ふみ子と林尹夫の2名、まったく名前も知らなかったのが横田英子の1名であった。このラインアップを見るだけでも、教科書に載らない人物が、いかに後世の日本人に、アンチテーゼという意味においても多大な影響力を秘めた存在であったかということが伺えた。もちろん、一般的な教科書でも名の知れる、中浜万次郎と田中正造の功績の偉大さを否定する訳では無いが。その中でも特に、→(2)2025/06/07
Oki
1
ハードな世界を生き抜いた人の物語。 アメリカがイランの核施設を攻撃したというニュースが入った日に。 2025/06/23