内容説明
なぜインフルエンザは毎シーズン大流行するのか。総合診療に従事する著者は「風邪でも絶対に休めない」という社会の空気が要因の一つだと考える。現在の日本では、社会保障費の削減政策が進み、負担は増え健康自己責任論さえ叫ばれ始めた。医療、社会保障制度のあり方を考察する。
目次
第1章 カゼでも絶対に休めない人へ(かかったかな、と思ったらすぐ受診?;市販のカゼ薬は弱くない ほか)
第2章 命の沙汰もカネ次第(いつでも、どこででも、だれでも医療が受けられる国;病院に払ったお金の流れ ほか)
第3章 世界に誇れる?ニッポンの医療(社会保障費は国家の足かせか;全世代で高い貧困率 ほか)
第4章 健康自己責任論の正体(カゼを引くのは気合い不足?;病気は公平に起こらない ほか)
第5章 困ったときはお互いさまの社会へ(生涯現役で年金の元を取れるか;老後2000万円問題 ほか)
著者等紹介
木村知[キムラトモ]
1968年カナダ生まれ。医師。2004年まで外科医として大学病院等に勤務後、大学組織を離れ、総合診療、在宅医療に従事。診療のかたわら、医療者ならではの視点で、時事・政治問題などについて論考を発信している。ウェブマガジンfoomiiで「ツイートDr.きむらともの時事放言」を連載中。医学博士。2級ファイナンシャル・プランニング技能士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hatayan
53
著者は、大学病院で内部告発して解雇された経歴を持つ医師。 貧困や不健康は個人の努力ではどうすることもできないもの。誰もが支える側、支えられる側のどちらにもなりうるなかで、国家の役割は社会保障と教育に手厚く投資して個人の幸福を実現し活力を最大限に高めることにあるはず。 医療のサービスに格差を認め自己責任を強調しようとする政府への警戒感は伝わるものの、医療だけでなく政治にもテーマを広げてしまっていることと主張が主観に偏りがちなせいか、特定の党派の論考の焼き直しを読まされている感が最後まで拭えませんでした。2020/07/06
shikashika555
40
今現在のコロナ禍と照らし合わせて読む。とくに第一章の新型インフルエンザ騒動の項。 コロナ禍においても、医療現場の問題(発熱者診察の困難や病床の不足)と保健行政の問題と(検査マネジメントの目詰まりやコスト赤字を生み出してしまう現行制度)労働環境の問題(陰性証明持ってくるまで出社停止とか、逆に体調不良だけではきちんと休める環境にないとか)、共同体の問題(陽性者を村八分等)、個人の認識の問題(そもそもの理解や生活自律)がごっちゃになって不安と不満の源になっているのを感じる。 第五章、首肯したい気持ちが →2020/08/19
活字スキー
34
大学病院在籍中、職場のあまりのブラックぶりを告発したところあっさりクビとなった経歴を持つ著者による、医療の在り方に留まらない、病める日本への熱のこもった提言。某野党議員(当時)との交流もあるそうで、思想としては左に寄った理想主義ではあるが、概ね同意出来るものだった。何事においても、まずは自助を求めるのは当然だが、それは共助や公助を疎かにしてよい理由にはならない。風邪でも絶対に休めない社会こそが病んでいるのは間違いない。 2020/03/04
こも 旧柏バカ一代
34
プロローグで心底ビビった。風邪は健康保険適応外で処方箋は出ない。人工呼吸器が着くようになったら保険適応外で早く死ねと医者に言われる。 そんな未来が見える昨今の日本の医療。 でも、現状は風邪ひいてもそう簡単には休めない。インフルエンザだったらさすがに休むが、携帯電話とメールで仕事させられたかw 病欠しても電話は掛かって来て対応を求められる。そして、職場をパンデミックするそれが今の日本の社会。 このまじゃ、この国滅びるんじゃね?2020/01/28
takeapple
15
なぜ希望した人全員にPCR検査を実施すべきではないのか、なぜ日本でコロナウイルス感染症やインフルエンザの流行が広がるのか、これから日本はどういう社会を目指すのか、良くわかった。成る程、そう言う科学的論理的な説明ならば十分納得できます。医療の問題も、日本の格差社会というか、今の多くの先進諸国が目指している新自由主義的価値観によるんだ。つまりは、このコロナウイルス感染症に晒されたことをきっかけに、お互い様の社会、みんなで助け合う優しい社会へ国家方針を転換すべきなのだと思う。最も大切なのは事実を知る事だと思う。2020/03/14
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