内容説明
その日、俣野脩一は訪れた施設の白い部屋で、ひとりの少女と出会った。天使のように白い肌と髪を持つ彼女の名は中村花絵。二人はお互いが、ある病理を患っていることを告げられる。『アンナ・メアリー症候群』。それは他人の感覚を共有し、やがて思考や感情までも融け合ってしまうという病。脩一と花絵は幼少期より、共有した視界に映る生活を、夢に見ることで繋がっていたのだ。出会う前から誰よりも深くお互いを知っていた、少年と少女の辿る数奇な日々。そして病を宣告された二人が向かう未来とは―?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miroku
27
他人と感覚を共有し、やがて思考・感情まで統合してしまう「アンナ・メアリー症候群」。難しい設定だと思う。唐辺葉介の、常に限界を突破しようとする姿勢が好きだ。2018/04/03
uchi
7
唐辺葉介さんの小説を読むのは初めて、別名義のテキスト作品を読んだことがあって大好きです。だからまあ、ラノベとはいえ一筋縄ではいかない作品だろうと読んで、その通りでした。どこまでも平坦な語り口で、奇病に冒された少年少女の生活が描かれる。お勧めはしないけど、おもしろいですよ2022/11/23
片瀬
6
つめたかったです。母親から偏った愛情と教育とある種の検閲を受けるも、内緒で賭け将棋喫茶の「将棋道場」に通い、プロ棋士を目指す少年・脩一。アルビノという遺伝子疾患により差別を受け、放火で家族を失い、その後も人間の悪意に苛まれた少女・花絵。二人は幼い頃から、両者の意識や感覚、記憶を共有してしまう難病「アンナ・メアリー症候群」を患っていた。他者の痛みを、真夏の日差しの鋭さを、わからない人々。その存在に深く傷つけられ、孤独を抱えた彼らだったが、幸か不幸か、奇病のために苦しみを分かち合い、再生の人生を歩んでゆく。2017/07/15
ヌガー
4
互いの意識感覚を共有してしまう奇病にかかった少年少女の話。 SF的な設定を使ってテーマを描く手法で、徐々に病気が進行していく展開などは「アルジャーノンに花束を」を思い起こさせる。 唐辺さんのいつもの作風通り全体的に暗いトーンで、その辺りが人を選ぶと言われる所以だろうが、乾いたユーモア混じりの淡々とした文章で描かれる無常はむしろどことなく心地よく、夏の雨の夜のようなしんみりした気持ちになる。 とっつきやすく、読みやすく、続きが気になる展開だが、結末まで淡々としていて読み終わった後の印象が薄いかもしれない。2015/04/14
ふわふわ
3
精神が同一化していくという病気にかかった少年少女の話。筆者の他作が好きだから期待して読んだら、期待以上に面白かった。傑作。 唐辺葉介さんの作品はどれもそうだけど、幸福とか不幸とか、あるいは善悪とか、希望とか絶望とか、そういうのを固定せずに現実を書こうとする姿勢が読んでて凄く心地良い。2020/09/04