内容説明
学芸員という職業柄、私は旧家や辺鄙な土地を訪れる機会がある。野々宮先生の喜寿を祝う会に出席した折、そうした場所で見聞きした話をまとめるよう先生に勧められた。漁師町で異様な虫に寄生され、瓢箪から這い出る子供に甘えられ、紛失した「天竺」の行方を追う。土地の因習を幻想的に書き上げた九つの奇譚が綴られる。第8回『幽』怪談文学賞・長編部門大賞受賞作。
著者等紹介
石川緑[イシカワミドリ]
1978年、大阪府生まれ。2005年、近畿大学大学院修士課程修了。2013年、「天竺」で第8回『幽』怪談文学賞文学賞長編部門大賞を受賞。受賞作を改題した『常夜』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mocha
87
民俗学者が出会う不思議な事どもを描く連作短編。そして次第に浮かび上がってくる恩師の過去。濁った沼の底に目を凝らすような話だった。蠢く気配はあるけど、霊だか妖怪だか、もしかしたらただの影なのか。掻き回せばますます見えなくなる。出会う人がみな闇をはらんでいて、一時も安心できない。怪異ではないけれど妻が怖かった。先生の事もよくわからず終い。いつか続編が出るのだろうか…。2017/08/06
ゆみきーにゃ
38
《図書館》読み始めてすぐ、合わないかも?って思い読み進めたがちんぷんかんぷんのまま読了。怖さも面白さも話の内容もわからなかった。2014/08/15
キキハル
24
博物館勤務の主人公が民俗調査に赴いた地で不思議な体験を重ねる連作短編集。かなり私好みだ。現代物であるのに昭和初期の湿った空気をまとわせた語り口は、ごく淡々とすすむ。どの話も終わり方が良い。説明するでもなく解決するでもなく、ただふっと終わる。それがとても良い。お気に入りは瓢箪の童と針。にこやかな奥さんの薄気味悪い執念が刺さって肌がざらざらした。それを口に出さずに甘んじて、引き出しに蒐集している主人公がいちばん変なのかもしれない。いくらでも続きを読んでいられそうな浮遊感がクセになる。次作も期待したい。2014/07/05
miroku
17
怪談…なのか? どう見ても民俗学小説とでも呼ぶべき作品だが……。2014/11/24
えふ
11
雰囲気はよかったが、行間にあるだろう登場人物達の関係性や話との繋がり、そこからの恐ろしさをいまいち汲み取ることが自分にはできなかった。2015/02/21
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- 和書
- きれいな人