内容説明
「おまえさんたちは誘拐されたわけじゃない。選ばれたんだ」あやしい「おばさん」たちにさらわれた子どもたちがつれてこられたのは、伝説の生きものたちの島だった。作者のウィットあふれる語りの魅力がいきいきと発揮された傑作長編。小学校高学年から。
著者等紹介
イボットソン,エヴァ[イボットソン,エヴァ][Ibbotson,Eva]
1925年、ウィーンに生まれる。幼年期に両親の離婚を経験。8歳の頃、ナチスの台頭によってイギリスに移住。生理学を学び、昆虫学者の夫と結婚したあと作品を書きはじめた。『夢の彼方への旅』(偕成社)でスマーティーズ賞金賞を受賞。幽霊や魔法使いが登場するファンタジーを中心に、その奇抜なアイデアとウィット、たくみな語り口が子どもから大人まで幅広い読者からの支持を集めている。2010年にニューカッスルの自宅で死去
三辺律子[サンベリツコ]
英米文学翻訳家。白百合女子大学大学院修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タカラ~ム
16
地図にものってない秘密の島。そこは生き物たちが癒やしを求めて集まる場所だった。生き物たちの世話をするエッタ、コーラル、マートルは、自分たちがいなくなったときのことを心配して、後継者となる子どもを誘拐することにする。そこから始まるドタバタは、イボットソンの社会に対する風刺に満ちていて、大人になって読むと胸に刺さる。欲深くて罪深い大人たちのエゴむき出しな姿は醜い。面白くて、そして深いお話だと思った。2019/01/13
ayame@児童文学感想中心
7
序盤は一見希望が全くないように思える物語だが、ある存在の登場により物語が大きく動く。 "人の欲"とその膨れ上がる欲をスッと抑える"自然"が物語の核となっている。そして自然の脅威の前では善人も悪人もないこともかすかに描かれている。一本の映画を、読んでいるような気分になれた。所々に現代を皮肉っている文章があって、個人的にはその点もこの話の魅力と感じた。ネタバレしたくなくて硬い感想になってしまったけど、訳がとても読みやすいので、多くの人に読んで欲しい。コメント欄に追加感想。2024/01/14
naonchi
7
物語冒頭いきなり子供を誘拐する計画を立てるおばあちゃん達が登場!なかなか過激だなぁ。舞台は、動物ばかりか伝説の生物までが助けを求めてくる秘密の島。巻末のプロフィールを見ると、著者は74歳の時にこの本を書いたようだ。う~ん、こんなに元気一杯の話を作れるとは・・・どんな素敵なおばあちゃんなのよ?と思ったら残念ながら2010年に亡くなってたんですね。。。自然保護を声高に訴えるのではなく、生きているもの全部、子供たちへの温かな目線を感じられる一作。2011/12/22
たけ
6
これは、地図にものってない秘密の島で、生き物たちの世話をするエッタ、コーラル、マートルという、お婆ちゃんの物語。 自分たちがいなくなったとき動物たちをどうするかのことを心配して、後継者となる子どもを誘拐することになる。 排気ガスや、動物園や、人間が自然に、どれだけのの事をしているのか、本当はそんな事しちゃいけない、でも、しちゃいけないなんて、誰も決めてないし、決められない、でもその中で、行動できる人は、凄いと思う。自分もそんな人になりたい。児童書みたいだけど凄く深い、だから面白い。
けいねこ
6
原題はIsland of The Aunts.おばさんたちの島です。出てくるのは、なにかしら問題を抱えたものたち。手伝いがほしいおばさん。虐げられたこども。住みかをなくした生きものたち。そして、人間性をなくしたおとな。 書きようによっては暗い告発ものになりそうなテーマを、イボットソンは独特のユーモアで柔らかく包み、そっと差し出します。こどもたちがすぐに救われることは、現実には難しい。だからファンタジーの力を借りて、イボットソンは語りかけます。こどもたちが幸せになれる未来を。2011/11/15