出版社内容情報
小学生の翔は、ふとしたことから
高宮さんと、その飼い犬トラウムと出会い、
週に2回の散歩を頼まれるようになる。
おばけの見える友達、仲がいい父と母、
同じマンションに住む芸能人とのやりとりのなかで
少年は、見えること、見えないことに思いをめぐらせる。
「じつは、たのみがあるんだ。もちろん、さっきのパンとは関係ないから、だめなら、だめだといってほしい。週に二回、朝、三十分、トラウムに散歩をさせてほしいんだ。もちろん、お礼はする。」
じつをいうと、ぼくはトラウムみたいな犬がうちにいたらいいと思っていたくらいだった。週に二回なら、いや、一日おきでも、やれると思った。朝なら、毎日だってできる。
「何時からですか?」
(本文より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モモ
53
斉藤洋さんの、少しひんやりとした話。小学生の翔は夏休みに近所の高宮さんの犬を散歩させることになった。翔の友だちの涼は他の人には見えない霊が見える。女の先生の後ろにいるパジャマ姿の男の子の霊を気にしている。何気ない日常のようで時折事件が起き、ジャーマン・シェパードのトリウムと事件を解決していく。少し心に余韻を残す話でした。2021/09/12
Roko
29
小学生の翔くんは、愛犬トラウムと散歩する高宮さんというおじさんと出会いました。そして夏休みの間、週に2回の散歩を頼まれることになりました。トラウムは時々、翔くんにはわからない何かを見つめていることがあります。仲良しの涼くんは、お化けが見えるらしいのです。そんな風に、自分には見えているけど他人には見えないことが他にもあるのかもしれないと翔くんは気づきます。2022/04/17
杏子
20
小学5年の翔は、ふとしたことから犬を連れたおじさん、高宮さんと出会い、飼い犬トラウムの週2回の散歩を頼まれるようになる。見えるものと、見えないもの…そんなことに思いを馳せるようなお話だった。互いに仲のいい両親や同じマンションに住む芸能人、霊が見える友だちとのやりとりの中で、様々なことに思いを巡らす。経験した少し不思議な出来事によって少年は少し成長していったのだろうか。斉藤洋さんの書かれるものは説明するとぼんやり、というかどこが魅力なのか?うまく言えないが、たぶん文体が好みなのだろう。続きがあったら嬉しい。2021/08/14
遠い日
9
見える⇆見えないということの狭間で、心揺らす翔のひと夏。見えない=無い、存在しないということではないと、我知らず悟っていく翔は、紡がれていく人間関係から考えを及ぼすクレバーな面がうかがえる。高宮さんとジャーマンシェパードのトラウムとの出会いから、一連の繋がりがするりと出てきた印象。別れがあったのは不意を突かれたかのような切ない経験だった。見ること。感じること。行動すること。翔は心の襞を増やしたみたいだ。2021/11/06
のり
8
ルドルフとイッパイアッテナの作者。翔は近所のおじさん「高宮さん」から夏休みの間、シェパードのトラウムの散歩を頼まれる。幽霊の見える友達や、トラウムの不思議な感性、高宮さんの秘密、ファンタジーではないが、こんな事あったらいいな、あるかもしれないと思う。終わり方がとても良い、ほろっとさせる。2021/12/20
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