出版社内容情報
沙羅は自分の誕生と引きかえに母親を失った。男手ひとつで育てられた彼女は作家を目指すようになり、新人賞を獲得、最初の作品はヒットするが、その後低迷が続き、あらたな作家としての可能性を探るため渡米する。リタイアメントホームのアルバイトでダニエルという老人と仲良くなった矢先、沙羅は、父親が危篤になった知らせを受け帰国する。
沙羅と彼女の描く作中作が、交互に描かれる構成。
作中作は、第一次世界大戦下で看護師として渡仏する椿イズミが主人公。
二つの物語は、いくつかのワードでつながっていく。
内容説明
アメリカに渡った作家とフランスに派遣された看護師。作家として行き詰まりを感じた沙羅は、アメリカに渡り、大学に通いながら、リタイアメントホームでアルバイトをしている。やがて彼女は、第一次世界大戦中のフランスで、派遣救護班の看護師として生きた日本人、イズミの物語を書き始める。現代のニューヨークと第一次世界大戦下のパリ。時代と場所をへだてた二つの人生に咲いた、一輪の花があった。
著者等紹介
小手鞠るい[コデマリルイ]
1956年岡山県生まれ。同志社大学法学部卒業。1992年からニューヨーク州在住。大人向けの文芸作品、児童書、ともに著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゃが
36
小説家・沙羅と彼女の描く作中作が、交互に描かれる。沙羅は新人賞を獲得したが、男手ひとつで育ててくれた父は再婚し疎遠となって、アメリカへと渡った。父親が危篤になった知らせを受け帰国する…。作中作は、第一次世界大戦下で派遣されたパリで看護師として奉仕する椿イズミが主人公。それぞれに「生きる」ことの義務、権利を戦傷者ノアに、介護施設の老人に、そして父親に教えられる…。YA向きだそうだが、あまりにも説明的で作為的で、こころに響かなかった。2025/02/11
まる子
24
小説でデビュー作が新人賞獲得後からヒットが出ない紗羅はアメリカに渡った。彼女は第一次大戦で軍人看護婦としてフランスに派遣された椿イズミの物語を書き始める。戦争兵士が命を落としていく中、イズミはノアに出会い、紗羅は老人と出会う。人には「生きる権利、義務、使命がある」ことをそれぞれが感じる。フランスで見た名前の知らない花と、沙羅の母が好きだった花。死の淵から生還した父から教えてもらった「クリスマスローズ」がイズミとどのような関係があるのかー。戦争や異国作品の多い小手鞠作品の中ではあまり感情移入が出来なかった。2025/01/18
雪丸 風人
14
およそ百年前、国の威信をかけて欧州の戦場に派遣された医療班の看護師と、その物語を紡ぐ現代の作家の視点で織りなす複層ドラマ。ミルフィーユか!なんてふざけてる場合じゃない。途中まで過去編が弱いかな~と感じていましたが、現地での医療活動が始まると、もう一瞬で引き込まれました。衝撃だったのはやはり命の軽さ。人が生み出した争いで人が次々死んでいく。彼らは何のために命を差し出さなければならないのか?という心情には共感しかなかった!小手鞠先生の作品は児童向けの本よりこういう方が好き。(対象年齢は13歳半以上かな?)2025/03/28
usako♪
9
著者の第2作目。物語は、作品作りに行き詰まった女性作家が生み出した、第二次世界大戦中の女性看護師と作家が交錯するストーリー。 戦時中の日本人看護師の歴史を学べると同時に、「生き続けること」と「自ら生を終えること」、それぞれの重い選択にある尊厳について考えさせられました。 文中に「人の心の70%は言葉で表現できる。しかし、残りの30%は、言葉で表現できない。その30%をかくのが小説家の仕事だ」...。なるほど、確かにと。 ダニエルとの会話がもっとよみたかった! なんと、今年初登録本。2025/02/26
タバサ
5
ご自身を彷彿とさせる日本から渡米した小説家紗羅と、紗羅が執筆中のかつて日本からフランスへ女の軍人として派遣されたイズミの物語が交互に描かれています。少し読みづらい。第一次世界大戦の戦場での描写は、史実に基づいているのでしょう、惨状が目に浮かび怒りを覚えます。新人看護師として患者に寄り添おうとするイズミに焦点を当てた本だと良かったかなあ。YAなので、歴史や看護に触れられる物語の入門的な色合いです。2025/02/25
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