内容説明
犬の散歩をひきうけて出入りするようになった家で出会った不思議な男の子。なんだかちぐはぐなのに、どうしようもなく響きあう心と心。子どもたちの現在を描き続けてきた児童文学作家による待望の長編。
著者等紹介
岩瀬成子[イワセジョウコ]
1950年、山口県に生まれる。78年にデビュー作『朝はだんだん見えてくる』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。92年に『「うそじゃないよ」と谷川くんはいった』で小学館文学賞、産経児童出版文化賞を受賞。95年に『ステゴザウルス』『迷い鳥とぶ』の二作により路傍の石文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mocha
96
岩瀬成子さんの筆は、子どもの心の襞を丁寧に綴る。気持ちをうまく伝えられない波ちゃんに、子どもの頃の自分を重ねながらも、母親としての自分はどうかと省みさせられた。おやつも洋服も手作りで教育熱心で、いつも子どもを気にかけている正しい母親。芽生え始めた幼い自我が、母の正しさに押し潰されそうで悲しい。親の知らない世界を少しずつ作っていくことで、子どもは自分を作っていくんだな。ファンタジックな部分も無理がなくて良いと思った。2015/12/19
ミーコ
55
女の子と犬の表紙に惹かれて、岩瀬さん初読みでしたが とっても心が暖かくなる素敵なお話でした。私も波ちゃんになった様な気持ちになり、引き込まれました。こんなお母さん ツラいよね。子供の事を1番に考えてるのは分かるけど 縛り過ぎ❕と思う… だけど真麻ちゃん 高島さん ハル 朝夫君に出会ってから徐々に自己主張が出来る様になって行き お母さんも変わり始める。波ちゃんと出会って高島さんも前向きになり大きな決断を・・・「ハル」の事を頼むシーンでは瞼が潤みました。朝夫君のノートも波ちゃんの書き込みも良かったョ2016/01/23
Rosemary*
51
内気で上手く気持ちを伝えられず、行動ものんびり屋さんな波。そんな娘に対し、良かれと思いついつい先回りして舵取りしてしまう母。その母も親との関係で苦い思い出が。波が自分の中で、これは違うという思いがフツフツも湧き上がり、偶然請負った老犬ハルとの散歩、ハルの飼い主で孤独な老婆とのやりとり、朝夫君との不思議な出会い、一つ上の自立した真麻ちゃんを通し自我にめざめていく。もう会うこもとないであろう朝夫君の温もりは、ハルのぬくもりとともにいつまでも心にあるんだろうな。2015/06/30
はる
39
良かったです。内気な少女は母親と本音で接することが出来ません。母親もまた強すぎる愛情が少女のプレッシャーになっていることに気付きません。そんな時不思議な少年と出合います。繊細で壊れてしまいそうなふたりの時間がいい雰囲気。ファンタジーだけれど母親や友達とのやり取りは現実感があって無理がありません。酒井駒子さんの表紙も魅力的。2014/03/08
小夜風
35
【図書館】酒井駒子さんの表紙絵に惹かれて手に取りましたが、凄く良かったです。自分の思いを言えない女の子、出来の良い兄、父親不在、頑張る母親…「ハッピーバースデー」みたいだなぁって思いながら読みましたが、少し不思議なことも絡んできて、とっても惹き込まれました。あまり泣いたり怒ったりもせず、感情の起伏が乏しい波が、静かに反発するのが、余計に打撃というか…母親目線から読むとお母さんがちょっと可哀想だったかな。でも朝夫くんと出会って、波が段々自分の考えを持てるようになって良かったです。2014/12/05