出版社内容情報
戦地へいった父の消息がとだえて1年以上。家を追われたマルタと母は居場所を転々としたすえに、ホテル・バルザールへやってきました。母がホテルの清掃の仕事をするあいだ、マルタはだれの邪魔にもならないようロビーで息をひそめて過ごします。まるで自分が透明人間になったかのようでした。
そんなある日、真っ赤なドレスを着て肩に緑のオウムをのせた老婦人がホテルにあらわれ、マルタにいいました。「314号室にいらっしゃい。あなたがおもしろいと思うお話を聞かせてあげる」。謎の老婦人が語るのは、嘘かまことか分からない話ばかり。オウムになった将軍、神から絵の才能を与えられた修道女、ナイチンゲールのように美しい声で歌う少年、眠れない王さま、話のできるキツネ、綱渡りをするサーカス団員。
バラバラだった話が次第につながり、7つめの物語が語られるとき、マルタが受けとったメッセージとは?
ミステリアスな展開とアール・ヌーボー調のイラストが華やかに調和した、美しい1冊。戦争によって日常も家族も奪われ、悲しみの底にいた少女マルタの気持ちが、いま切実に胸に響いてくる。
【目次】
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- 金沢発特急「北陸」殺人連鎖 講談社文庫