出版社内容情報
川と町のあいだの森。くずれた崖の奥底で、黒いたまごから、がろあむしの赤ちゃんが生まれた。がろあむしは、まっくらな世界をかけまわり、小さな生き物たちを食べて大きくなる。ときに襲われてボロボロになりながらも、生きるために走りつづける。
やがて大きくなると、オスと出会い、たまごを産む。しかしある日、がろあむしは燃えるように赤い体とともに、その一生を終える。だれも知らない地下の暗黒世界で、ひとつのドラマが終わったとき、町は――
地下の暗黒世界に広がる宇宙と、そこに生きる小さな虫の大きな一生。そして、おなじ地平で変わりゆく人間たちの社会を濃密に描き出した怪作。『つちはんみょう』で小学館児童出版文化賞を受賞した著者が、取材に約10年を費やした渾身の絵本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
すぱちゃん
62
非翅目の昆虫ガロアムシ。地下に暮らし、特に特長のないこの昆虫は、発見者にちなんでガロアムシという。幼虫の頃は白く成虫は赤褐色になる以外に、特に区別もつかない。先日、ガロアムシの標本を入手する機会に、恵まれたので、罪本となっていた、舘野さんの本書のページをめくってみた。地下昆虫の生態観察って?と思ったが、飼育下での観察で、ガテンが行く。ガロアムシの生涯のおよそ8年の間に、環境だって変わっていく。ガロアムシが現代まで生きた化石として、生き残り続けているのは、ある意味奇蹟の積み重ねと感じた。標本画像貼ります。 2023/11/24
seacalf
62
小学生の夏休みは丸々1ヶ月間強制的に父の実家の山奥に行かされていた。なので虫が友達。ありとあらゆる昆虫を捕まえては虫籠をいっぱいにしていた。その当時大好きだったのはカブトムシでもクワガタでもなく、オケラ。水陸両用、空も飛べるし地中も自由自在、そして秋の虫のように鳴く事もできるからだ。その可愛いケラにフォルムが似ているかなあと思った絵本のがろあむし。全然違った。かつての虫好き少年でも大いに怯むほどのインパクトある大判いっぱいの生々しい絵、食って食われての自然の摂理をまざまざと見せつける。虫嫌いの方はご用心。2021/05/27
アナーキー靴下
57
お気に入りの方の感想を見て、がろあむしって何なんだ、見たことも聞いたこともない、と気になり読んでみた。岩、土、落ち葉ばかりの、地味な「ガレ場」での地味な虫の一生が、美しく精密なタッチの絵で描かれた観察絵本。その一生は生命の営み、循環を感じさせる壮大なドラマであるものの、どこかで聞いたような、コモンな虫の、よくある一生にも思える。まあユニークなエピソードのある虫ならもっと有名だっただろう。しかし多分だからこそ素晴らしいのだ。一寸の虫にも五分の魂、の言葉はがろあむしのような虫にこそ…え、2cm? 惜しい。2021/03/20
マリリン
46
土の中での生命の循環は日常意識する事はないけど、子供の頃土を掘ったり、枯葉をよけたりすると色々な虫がいた。記憶は薄れているものの父からその虫たちの事を教えてもらった。驚きと恐怖で手をひっこめた私の傍で平然と土に接する父の姿...当時の記憶が蘇る。命と命の繋がり、それは生命の循環。本作から静かな息吹が伝わってくる。全てのものに生命があり循環しつつ変わってゆく様を受け入れるのは、寂しくもあるけど、8年かけて変貌してゆくがろあむしが生きた土の中を描いた自然はあたたかさを内包する。2022/04/24
まま
38
「がろあむし」ってなに? って思って手に取った。あまりに特徴のない虫のため、発見した人の名前がつけられたそう。平たく言えばがろあむしの一生ですが、あまりにリアルで美しい絵で語られるソレは、ある意味恐怖でした。2020/11/07
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