内容説明
荒野で、弱者、貧者に手を差し伸べられるのは誰なのか。根源的な問いを東日本大震災は突きつけた。「レスキュー機能ゼロ」地帯に、果敢に挑んだのが一般社団法人釜石医師会のドクターたち。本書はその記録である。
目次
震災前夜―合同庁舎4階での防災会議
情報途絶―医師たち、それぞれの被災
病棟被災―災害拠点病院としての使命
被災翌日―試されていた、医療継続の「現場力」
患者搬送―内陸部への「肋骨搬送モデル」
遺体検案―増え続ける犠牲者の前で
薬医連携―被災しながら医療支援活動の最前線に
孤立無援―水面の孤島となった県立大槌病院で
全町壊滅―防災教育が生んだ「鵜住居の奇跡」
始動前夜―釜石医師会災害対策本部医療班
医療統率―災害時の医療継続の要を探る
釜石方式―非常時医療の要となった「お薬手帳」
医歯連携―「釜石方式」に倣った歯科の訪問診療
復興再生―医師たち、それぞれの再建
地域医療―釜石医療圏そのものが、「いのちの砦」
著者等紹介
芦崎治[アシザキオサム]
1954年、富山県黒部市生まれ。立教大学法学部卒。ノンフィクションライター。朝日新聞東京本社「天声人語」担当論説委員。辰濃和男のリサーチャー、『週刊朝日』(朝日新聞出版)立花隆の連載「田中新金脈追及」、鎌田慧の連載「一億みんな芸能人」など取材記者を経て独立。以後、各誌に寄稿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
スー
4
いのちの砦は施設だはなく医療関係者達による活動で維持されていた。震災時は情報も無く何も分からない状態から始まる。スタッフ達が避難所を回り状況を調べ、薬や食糧を集め、他の病院を訪ね患者の受け入れを頼み歩いた。釜石医師会災害対策本部ができてから各地から集まった支援チームを効率良く避難所に送り込む事が出来るようになり、お薬手帳が避難者のカルテになり、どの医師が診察しても間違いなく薬を出す事ができ電源を失っている被災地では重宝した。自身も被災して家族や家の心配もあるなか医療に従事した方々に頭が下がりました。2016/07/03
Junko M
1
親戚がこの本つくりに参加して、送ってくれました。医療関係者として、何をすべきなのか、必要になったら読み返そうと思います。こういう具体的な記録があとあと役に立つんだろうな~。釜石医師会はすばらしい!2015/09/30
K
1
震災後の釜石での医療体制の記録。それぞれが勝手に動く、と書いてあるのだが、最終目標が医師のみならず医療者や市の担当者とも共有されていて、機動的に動けていたさまに感嘆を覚える。そこに県とかが絡むととたんに縦割り行政の弊害が出るのは残念ですが…医師も学閥を利用こそすれどそれにとらわれることなく(まして権力争いにかまけることもなく)、地域の人にとって本当にためになることをしようという視点で動いている。普段からの風通しの良いコミュニケーションの賜物なのだろうと感じた。2015/09/07
teafool
0
災害時医療についてもそうなんだけど、今、高齢者分野で盛んに言われている「顔の見える関係」とか「連携」について、いろいろ感じるところのある1冊。とりあえず、お薬手帳を持つことから始めてみよう。新規開業の先生に、他の先生が「相談する先生が増えるのはいいねぇ!」というエピソードが、この地域のよさをよく表しているなぁと。2017/08/05
borracho
0
3/11の地震から津波到来、その後町が機能するまでの釜石市の医療機関の連携を追ったルポ。自宅が流され、家族の安否も確認できないまま、それでも患者さんを何とかしようとする、医療関係者の無私的な行動にただただ頭を下げるのみ。ライフラインを失われ、警察も消防も機能しないという環境で、最後の砦となるのは、人間力なのだろうなぁ〜。2015/11/03




