出版社内容情報
かくも深き「死」の覗き穴へといざなう、著者の新たな代表作!無頓着に、記号のように訪れる「死」。日常にありふれている事象なのに、なぜ私たちの心を捉えて離さないのか?「死」に対して、崇高な気持ちと卑俗な情動で揺れ動く、人のふしぎな心の有りように迫る。映画、小説、漫画などさまざまな作品紹介を交え、カルチャーガイドとしても楽しめる。装画はヒグチユウコ氏による描き下ろし!<目次>第1章 死ぬ瞬間第2章 「永遠」は気味が悪い第3章 見知らぬ世界第4章 取り返しがつかない第5章 死体の件第6章 死と悪趣味
内容説明
誰しも迎えるその刹那…人はどうなるのか―?無頓着に、記号のように訪れる「死」。日常にありふれている事象なのに、なぜ私たちの心をつかんで離さないのか。「死」に対して、崇高な気持ちと悪趣味な情動で揺れ動く、人間のふしぎな心の有りように迫る。カルチャーガイドとしても楽しめる一冊。
目次
第1章 死ぬ瞬間
第2章 「永遠」は気味が悪い
第3章 見知らぬ世界
第4章 取り返しがつかない
第5章 死体の件
第6章 死と悪趣味
著者等紹介
春日武彦[カスガタケヒコ]
1951年、京都府生まれ。日本医科大学卒業。医学博士。産婦人科医を経て精神科医に。都立精神保健福祉センター勤務後、都立松沢病院精神科部長、都立墨東病院神経科部長、多摩中央病院院長、成仁病院院長を歴任。成仁病院名誉院長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
87
著者は産婦人科から精神科医になった経歴の方。70代となって死を意識するようになり、小説などの文学作品で死の瞬間を扱った文章を多数引用して考察している。「わたしは死という事象がもたらす恐ろしさや不穏な感触、気味の悪さは「永遠」「未知」「不可逆」の三つに立脚しているだろうと考えている」とし、それぞれを章立てしている。最後の章に、死と悪趣味があり、死と向き合う人の防衛機構への言及がある。躁的防衛などがその最たるもので無意識に現出してくるという。医学生の解剖実習は、死と向き合うために無くてはならないものと論ずる。2024/12/29
chie
32
副題「人はなぜ好奇心を抱くのか」という問いへのストレートな答えが書かれている訳ではなかった。ヒントは散りばめられている様な感じはするのだけれど、私には、とりとめなく感じた。「わたしたちは死のうと思えばすぐにでも死ぬことは可能だから、すなわちあの世は目と鼻の先に存在していることになる」という発想にハッとさせられた。確かに、そう考えると、あの世は遠い場所ではないのである。私たち人間は、死という、自分にとっては未知の事象に対して、「躁的防衛」という防御対策をとることがある、というのも、説得力があった。2025/01/13
特盛
29
評価3/5。精神科医、春日氏の死にまつわるエッセイ。死を見つめた時に春日氏の心に沸き起こる感情の観察と関連した様々な文学や映画作品の引用が中心だ。グロテスク、呪詛、根源的な不快感、という枠組みで死について語られる。サクサク読め、また著者の博覧強記ぶりに驚く。本書を読んでいる時に偶々年末、妻の母が亡くなった。普段の生活で覆い隠されている死について、いやおうでも意識させられた。自分もすぐこうなるのだ、と。ハイデガーは、死を意識する(先駆)ことで生の本来性が取り戻されると言っていたのを思い出した。人生は短い2025/01/07
空猫
26
「死」。タブーである。が、気になったり怖がったり、魅了されたりするのはなぜか、の考察。生と死の境目は何処か?人生が、苦しみが、永遠に繰り返される恐怖。あの世とはどんな所か。死、とは未知の事象で永久で取り返しがつかないから怖い。家族でも死体になると別人に見える、物体に過ぎなくなる。死にまつわる事には笑ってしまう様な滑稽さもある。いつも通り小説や映画の紹介もあり。Dr.春日は新刊が出れば読んでいる位のファンだ。面白いけど新書で出すほどの専門性は無くブログレベル。悪趣味で興味深いのだけれどね。2025/01/07
メタボン
24
☆☆☆☆ 表題から想像していた内容とは違ったが精神科医ゆえの死に対する考察が面白かった。小説・映画・マンガにおける死の描写についての言及も多く、今後の読書に深みが増すような気がする。死の3つの要素「グロテスク」「呪詛」「根源的な不快感」。櫂未知子の句「されど死は水羊羹の向かう側」。丹羽文雄の短篇「彼岸前」。リチャード・マンスン「奇蹟の輝き」(映画化あり)。死の恐ろしさは「永遠」「未知」「不可逆」に立脚。高橋たか子「双面」「顕われ(所収は怪しみ)」。加能作次郎「屍を嘗めた話(所収は世の中へ/乳の匂い)」。2025/01/24