出版社内容情報
現代日本は「ペアレントクラシー(親の影響力が強い社会)」という言葉で形容できるほど、社会階層の固定化が進んでいる。かつてないくらいに、子どもの社会的地位、学歴と保護者の学歴、経済力とに強い相関関係が見られるようになっているのだ。生徒、保護者、学校、教育行政の観点から日本がペアレントクラシー化に至った経緯を分析し、教育の公正の実現に求められる策は何かを提言する。
内容説明
アリストクラシーからメリトクラシー、そして今、ペアレントクラシーへ―。公教育の場が、階層固定の装置となりつつあり、置き去りにされる生徒、不安に苛まれる保護者、困惑する教師と窮地に立たされる教育行政―。新自由主義が浸透する現場で苦しみ、抗いながらも格差是正と公正を望み、探り、求める人々の「声」を通し、わが国の教育のあり方を問う意欲作。
目次
第1章 ペアレントクラシー化する社会―何が問題か
第2章 追い詰められる子どもたち
第3章 不安のなかの親
第4章 戸惑う教師たち
第5章 四面楚歌のなかの教育行政
第6章 脱ペアレントクラシーへの道
著者等紹介
志水宏吉[シミズコウキチ]
1959年兵庫県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了(教育学博士)。東京大学教育学部助教授を経て、大阪大学大学院人間科学研究科教授。専攻は、学校臨床学、教育社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りょうみや
31
ペアレントクラシーは親の経済力と願望が子供の能力と将来の地位に大きく影響して格差が世代間に引き継がれる社会のこと。最近は「親ガチャ」という言い方が流行っているが教育社会学では昔から自明のことだった。教育社会学の大家の著者らしくペアレントクラシーを子供、親、教師、教育行政それぞれの立場から多角的に眺め、特に著者の生徒の阪大生達の体験と考えが多く載っており興味深い。著者の本は何冊も読んでいるが、いつも大事と思えることを分かりやすく伝えてくれる。2022/10/02
香菜子(かなこ・Kanako)
26
ペアレントクラシー「親格差時代」の衝撃。志水 宏吉先生の著書。現代の日本がペアレントクラシーだというけれど現代の日本だけが特別にペアレントクラシーだとは思えません。世界中のどこの国だってペアレントクラシーだろうし昔の日本だって。教育の機会の平等はあったほうがいいのは間違いないけれど教育の無償化が年々進んでいるから不平等感は改善されているから。子供にかかる費用のすべてを公費負担するのはそれはさすがに違うと思う。背伸びをしないで身の丈にあったお金の使い方を身に着けさせることは立派な教育だもの。2022/08/15
テツ
22
それがそのまま人生の全てを決定し決して覆すことができないとは言わないが、御両親共にそれなりに学歴があり学ぶことの大切さを知っていて、安定した世帯収入からしっかりとこどもに投資をしてくれる環境と、金がなくまともに育てることもせず、モラハラや虐待までかましてくるような環境とでは、こどもの世界の見え方が変わってくるんだろうなとは思ってしまうな。資本主義社会において食うに困るようなレベルでなければ金銭的な余裕のあるなしの差は仕方のないことだけれど、それ以外についてはこどもが苦しむことのないようにケアしてほしい。2022/09/25
まゆまゆ
16
親の影響力がきわめて強い現代の社会をペアレントクラシーと呼び、その弊害を語る内容。背景に新自由主義と個人の能力と努力によって人生が拓かれるというメリトクラシーがあることを指摘し、今後ますます二極化が進む可能性も。公正な教育を実現方法することで回避する案もなかなか難しそう……2022/09/13
てくてく
9
子どもの学歴や人生における親の影響力について、子ども、親、学校や教育制度などの視点から考察したもの。橋下知事時代以降の大阪の教育現場の混乱やその中でもかなり頑張った人たちの取組も紹介されていて面白かったが、一人の親としては、それで、どうしたらいいのか、という点での回答が示されているわけではないので、多少途方に暮れる気もした。2022/09/23