出版社内容情報
「近代の終焉」後、長く混迷の時代が続いている。従来の思想史や哲学史では見逃されてきた「死者」と「霊性」という問題こそ、日本の思想で重要な役割を果たしている。19世紀以来展開された神智学の系譜にさかのぼり、仏教学の第一人者が「希望の原理」を探る。
内容説明
東西融合から生まれる思想の叡智をめぐる旅。キリスト教、仏教、神道、インド哲学、啓蒙主義、普遍主義、親鸞、曇鸞、最澄、マルクス、サルトル、レヴィナス、本居宣長、平田篤胤、西田幾多郎、カスリス、ブラヴァツキー、ベサント、鈴木大拙、田辺元、井筒俊彦…「メメントモリ」「死の哲学」、靖国神社から日本国憲法まで。仏教学の第一人者がたどり着いた「ポスト近代論」。
目次
1章 近代は終焉したか?
2章 普遍か、特殊か
3章 厄介な他者
4章 死者と死後
5章 死者と霊性的世界―神智学を手掛かりとして
6章 日本の霊性論
7章 霊性的世界と言葉
8章 霊性と倫理
9章 理想と夢想―もう一つの近代の道
10章 理想を呼び起こす―ポスト近代に抗して
著者等紹介
末木文美士[スエキフミヒコ]
1949年、山梨県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。博士(文学)。東京大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。専門は仏教学・日本思想史。仏教を含めた日本思想史・宗教史の研究とともに、広く哲学・倫理学の文脈のなかで現代に生きる思想としてのあり方を模索(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tamami
49
私たちにごく身近なものでありながら、直接には体験することのできない「死後の世界」。ポスト近代の思想界はそれをどのように捉え、どう説明してきたか。哲学、神智学、仏教、神道等諸々の学、宗教からの見方を解説していく。非常に広範囲な分野の学説、教理が扱われているので、全体の筋を捉えるのは難しいという印象を受ける。一方で、普段は見ることも知ることもできない死後について、このような豊かな世界が想定されていることに驚く。本書で説かれている東西融合の智慧という言葉に惹かれ、日本の伝統的思想を学び直す機会を持ちたいと思う。2022/07/05
odmy
2
生者と死者の間の倫理的関係みたいなものについて論じた本なのかなと思って読んでみた。それらしいことも書いているものの、話が散らかりすぎて何が何だかよくわからなかった。「十界互具」とか「存在としての菩薩」とか、面白そうな考え方が出てくるのに、それが十分に展開されないまま、次の章になったら議論から跡形もなく消えてしまう。著者としては、霊性とか死者をベースにした倫理によって、近代社会の行き詰まりを乗り越えようという思いがあるようだ。でも、それが結局どういう倫理なのかよくわからなかった。お墓参りすればいいってこと?2024/11/07