出版社内容情報
経済格差が拡大し「総中流社会」は完全に崩壊した。そして今、中流が下流・アンダークラスへの滑落するリスクがこれまでになく高まっている。また中流も多層化し、社会の分断も急速に進んでいる。『新・階級社会』著者が、様々なデータを駆使し、現代日本の断層をつぶさに捉えた意欲作!
内容説明
もはや「中流」ではない―。階級社会の実相を描き出す!日本人はなぜ自分を「中流」と思ったのか?かつてさかんに言われた「一億総中流」とは、国民の願望がつくりあげた幻想に過ぎなかった。現在、新型コロナ禍が追い打ちとなり「中流」は消滅寸前、さらに中流内の二つの階級―新中間階級と旧中間階級―の分断が深刻なものになりつつある。中流層の現状を明かし、理想的な「総中流」を考察する。
目次
第1章 「総中流」の思想
第2章 理想としての「中流」
第3章 「総中流」の崩壊
第4章 実態としての「中流」
第5章 主体としての「中流」
終章 中流を再生させるには
著者等紹介
橋本健二[ハシモトケンジ]
1959年、石川県生まれ。東京大学教育学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、早稲田大学人間科学学術院教授。専門は社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よっち
35
かつてないほどに格差が拡大し消滅寸前の中流層。戦後日本における中流の生成と軌跡をデータを通じて論じるとともに、社会における「中流」の状況を検証し、理想的な「中流」のあり方を探る一冊。佐藤俊樹さんや橘木俊詔らの論も取り上げつつ、高度成長期に言われた「一億総中流」はミスリードと国民の願望による幻想だったという指摘、そこから旧来の中間層とは違う新中間層の登場、高度成長期以降の格差が拡大してゆく推移、旧中間層・新中間層を中心とした傾向分析は、最後の提案こそややありきたりではありましたけどなかなか興味深かったです。2020/08/18
まゆまゆ
12
かつて「一億総中流」と言われた日本社会は、単なる思い込みであったことを語る内容。「中」がよいものと考え、みんなが中であるような社会はよい社会、と考える雰囲気が当時あったのは、今ほど他人の収入に敏感ではなく、自分の生活程度が社会のなかでどのような位置付けかは分からなかったことが大きい。格差社会や階級社会が論じられ総中流を信じなくなった現代社会では、いかに格差を意識させない政策を行えるかがカギになる。2020/08/03
yyhhyy
5
前半が過去の世論の振り返り、真ん中に中流の夫婦の職業分類があり、後半は中流が右派か左派かという思想の意識調査。タイトルから想定したものとはちょっと違ってかなり左寄り。2024/07/15
訪問者
4
それなりの実体があった「一億総中流」が崩壊し、格差社会となった日本であるが、格差社会は様々な弊害があるので、中流の保守とリベラルが連携し、中流の範囲を拡大することが必要と説く。ただ本書でも指摘しているようにそれを代表する政党がないのが現状。2023/10/18
coldsurgeon
4
ずいぶん前になるが、「一億総中流」という言葉が、日本の社会にあふれた。いまや、それは死語になり、格差社会の中で、中流意識は、薄らいでいる。著者は、中流という階層を、歴史的にそして統計学的に解析し、現代に新たな中流階層を生み出すことが、新しい望ましい社会を創ろうと提案している。2020/10/09