出版社内容情報
核廃絶の道が遠ざかり「新冷戦」の兆しに包まれた不穏な世界。民主主義と資本主義の矛盾が噴出する国際情勢をどう読み解けばいいのか。米中貿易摩擦、香港問題、IS拡散、移民難民、ポピュリズムの世界的潮流などを分析。
内容説明
新冷戦の兆しに包まれた不穏な世界。米イラン危機、米中摩擦、香港問題、中台関係、IS拡散、英国EU離脱、反・移民難民、ポピュリズムの世界的潮流、衰退する自由主義…民主主義と資本主義の矛盾が噴出する現在をどう読み解けばいいのか?「役立たず」にならないための国際関係論。
目次
第1章 大国の条件
第2章 北風も太陽も役に立たないとき
第3章 民主主義の後退
第4章 常識が正しいとは限らない
第5章 世界の不安定は加速する
第6章 多数決はいちばんよい制度か
第7章 トランプ大統領と安倍首相の世界
第8章 何が終わり、何が変わったのか
第9章 挑発と誘惑の果てに
著者等紹介
藤原帰一[フジワラキイチ]
1956年、東京都生まれ。国際政治学者。東京大学未来ビジョン研究センター長。東京大学法学部卒業、同大大学院博士課程単位取得中退。フルブライト奨学生としてイェール大学大学院留学。東京大学大学院法学政治学研究科教授。専門は国際政治、東南アジア政治(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
28
圧縮された、ムダのない文章。遊びのない論理展開。そして、こちらを無闇に煽らない論調で綴られる常識。手堅いといえばこれ以上手堅いものは望めないといってもいい「国際政治」の時評がここにある。読み終えて、これまでの十年間を概観できたのは収穫だった。トランプ登場以前と以後ですっかり景色が変わってしまったこと(ブレグジット? あれすら霞んで見える)がわかり、実はフクシマと同じくらい彼が大統領になってしまったのはまずかったかもしれない……と(ってことはないか)。混沌の現代社会にあってここまで冷静なことはひとつの才能だ2020/04/21
大先生
11
朝日新聞の月1コラム「時事小言」約10年分をまとめた本です。藤原さんも、リベラルに分類されるかと思われますが、【場合によっては武力行使やむなし】というリアリスト。慰安婦問題は証拠がなくても認めればいいという考えには賛同しかねますが、学者なのに理想論を大展開していない辺りは◎。面白いのは、数回トランプ現象批判を展開し、「トランプ氏の敗色が濃くなっている。」(2016.10)と断言していたのに、「トランプ氏はどのような政策を目指すのだろうか」(2016.11)と、予想が外れたことを完全にスルーしていた点です。2021/03/22
まゆまゆ
11
世界情勢について2011年からの新聞連載の時事評論のコラムをまとめた内容。アラブの春をはじめとする独裁政権の崩壊と民主化が叫ばれていた時期から、反グローバリズムからくる自国第一主義まで、見方によってはアメリカ大統領の交代によって世界の地政学も変わった、ともいえる。軍事力の抑止戦略には限界があり、時には武力行使が必要という主張が意外だった。2020/06/24
武井 康則
8
本書は2011年から20年までの朝日新聞「時事小言」を過去から順にならべている。著者はアメリカが専門なのだろう。だから対アメリカの記事が多い。今起こっている問題を取り上げる時評を終わってから読んでいるわけだが、東日本大震災、中韓との国境問題、イラン、北朝鮮、IS、トランプ、安倍首相と振り返ると問題の何一つ解決していないことに愕然とする。そしてこのコロナの問題が終わった時、世界はよくなるのか、さらに悪くなるのか、また十年後、読み返してみたい。今もまた歴史の転換点なのだろう。2020/04/06
ニコ
5
「抑止にも軍事介入にも安定と平和が期待できない」今の世界で、寛容と国際協調の重要性が繰り返し出てくる。冷静で理性的な眼差しがすごい。黒人作家ボールドウィンの一文が印象的。“白人エリートにも黒人の過激主義にも与することができず、キリスト教の教えにも救いを見出せない”…2022/05/22