内容説明
深い洞察力と透徹した文章で知られる元・朝日新聞編集委員が、大震災と原発事故に震える現地を何度も歩いた。そして知る―。著名な文学作品の数々が、この国の過ちを言い当てていたと。「汚染の拡大」「孤立」「内部被曝の危険性」をも告発していたと。
目次
第1章 復興には、ほど遠い―カミュ『ペスト』
第2章 「放射能に、色がついていたらなあ」―カフカ『城』
第3章 「帝国」はいま―島尾敏雄『出発は遂に訪れず』
第4章 東北とは何か―ハーバート・ノーマン『忘れられた思想家 安藤昌益のこと』
第5章 原発という無意識―エドガール・モラン『オルレアンのうわさ』
第6章 ヒロシマからの問い―井伏鱒二『黒い雨』
第7章 故郷喪失から、生活の再建へ―ジョン・スタインベック『怒りの葡萄』
終章 「救済」を待つのではなく―宮沢賢治『雨ニモマケズ』
著者等紹介
外岡秀俊[ソトオカヒデトシ]
ジャーナリスト。北海道大学公共政策大学院(HOPS)研究員。1953年、札幌市生まれ。朝日新聞社で学芸部、社会部、ニューヨーク特派員、編集委員などを経て2006年から2年間、東京本社編集局長を務めた。2011年、退社(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なおこっか
5
震災被害者の十三回忌が近い。本書は朝日新聞元記者が2011年4月から東北に通いながら記したもの。先日著者外岡氏が亡くなった折、池澤夏樹氏が弔文を書いていたので、信頼に足る記者だったのだと思う。やはり現場に通った上で活写される現実が力強い。原発事故発生時、政府が距離で避難地域を区切った結果、サポートの必要な人々が残っているのに病院が機能できない地帯が生じたことなど初めて知った。文学を引き合いに出しながらの著者の態度は明確に、国家が国民を赤子扱いし、知らせないことへの怒り。安藤昌益は極端とは思うが、読みたい。2023/02/14
hakodadi
3
同じ頃出た「3.11複合被災」と対をなす好著。震災のレポートに古今の文学作品が重なる。取り上げられた作品は、ペスト、城、出発は遂に訪れず、忘れられた思想家ー安藤昌益のこと、オルレアンのうわさ、黒い雨、怒りの葡萄、雨にも負けず。著者の読み込みの深さに圧倒される。すでに読んだ本も再読を迫られそう。2012/03/23
takao
1
ふむ2023/10/31
休止中
1
さすが、元朝日新聞社の東京本社編集局長だけあります。とてもわかりやすい文章で、核心をついていると思いました。著名な文学作品の数々が、この国の「過ち」を言い当てていたとのですね。 この本で引用されている作品は、ぜひ読みたいです。 それにしても、当時の政府や、担当大臣の対応には、疑問が残ります。 2012/11/29
DEN2RO
1
震災と原発事故が日本社会にもたらした不条理は過去の文学作品に描き出されていました。被災三県の現状と政府の対応を「ペスト」や「城」、「黒い雨」や「怒りの葡萄」などと照らし合わせて述べています。被災者が絶望の中から希望を見つけて立ち上がれるような国の施策を望みます。2012/03/17
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