内容説明
34年の短い生涯で、約2万4000もの俳句を残した正岡子規。その中から1日1句、365句を、俳人の夏井いつきが、実作者としての感性で選び出す。有名でない句の中にも、子規らしいほのぼのとした佳句、異色の作品がある。子規の苛烈な人生と、俳句の素晴らしさが迫ってくる一冊。
目次
はつ夢―一月~三月
花見―四月~六月
夏の星―七月~九月
桔梗―十月~十二月
著者等紹介
夏井いつき[ナツイイツキ]
俳人。1957年生まれ。愛媛県松山市在住。俳句集団「いつき組」組長。8年間の中学校国語教諭を経て俳人へ転身。94年俳句界での新人登竜門「俳壇賞」、2000年「第五回中新田俳句大賞」受賞。テレビ・ラジオへの出演、俳句の授業「句会ライブ」の開催、全国高校俳句選手権「俳句甲子園」の運営等、全国的に活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syota
27
TV番組「プレバト」で人気の夏井いつき先生が、一年間新聞に連載したコラムをまとめたもの。毎日子規の俳句を一句紹介し、それにまつわるご自分の思い出を綴っている。句の解説よりエッセイが主だが、これまで子規の俳句をほとんど知らなかったので、紹介される句の数々に心惹かれた。不治の病で苦しみながらも、ユーモラスな句や軽やかな句を次々に詠んでいることが印象的。「秋の蚊のよろよろと来て人を刺す」など、今の季節にぴったりだ。「稲船や野菊の渚蓼(たで)の岸」は、なんと季重なりで三段切れ!天才にタブーなどない。2018/09/17
pirokichi
19
一月一日から十二月三十一日まで、一日一句子規さんの俳句と夏井さんの鑑賞。朝日新聞に連載されたものらしい。「いくたびも雪の深さを尋ねけり」「故郷やどちらを見ても山笑ふ」「毎年よ彼岸の入に寒いのは」「故郷はいとこの多し桃の花」「夕桜何がさはつて散りはじめ」「藤の花長うして雨ふらんとす」「六月を奇麗な風の吹くことよ」「薪をわるいもうと一人冬籠」365句を夏井さんの鑑賞とあわせて読むことで、「軽快で、無邪気で、激烈で、執拗で、ぬけぬけと明るい子規!」の魅力をあらためて感じた。奇を衒わず素直に詠むことを心がけよう。2022/02/19
ロビン
19
俳句ブームの火付け役と言われるTV番組「プレバト!」で活躍されている俳人の夏井いつき先生が、朝日新聞紙上で連載していた「子規おりおり」を書籍化したもの。一日一句子規の俳句を紹介・解説し、巻末には日清戦争の従軍記者として子規がかつて訪れた大連への訪問記が付されている。子規の俳句は、言葉のカメラでパシャリとシャッターを切るような写生の句であり、詠みこまれる感情も驚くほど率直であり、身は病床にあってもユーモア豊かであって、読んでいて気持ちがいい。しかし素朴に見えて神経の行き届いた言葉選びがされているのは流石だ。2021/04/17
nemunomori
15
「子規さん」と呼びかける夏井いつきさんの優しさが心に浸みる365句の俳句選。一句ごとに挟まれるコラムが感動的に分かり易く、なおかつユーモラス。十七文字からここまで読み取る夏井さんの感受性の豊かさに驚嘆します。おかげで近寄り難かった明治の文豪が茶目っ気たっぷりの才気溢れる若者として現出しました。「春雨やお堂の中は鳩だらけ」「草枕の我にこぼれよ夏の星」「星一ツ飛んで音あり露の原」子規さんって面白い!2016/07/08
自然堂
5
子規の句に、洗練されたものはあまり多くない(著者がそういう句を中心に選んでいるだけかもしれないが)。どちらかといえばこじんまりとしていたり、ぷっと吹き出してしまうような素直な句が多く、また詠まれた時代もあってか、句の土台となる価値観も今と地続き感があって現代的な感覚でそのまま読める為、とても親しみ易く面白かった。臥床している人間の句とは思えない程愉快なものが多く、無邪気に俳句を楽しんでいる様が感じられるが、常に死を意識し続けた苛烈な人生を送ったからこそのこの作風なのか、と考えると少々切なくもある。2013/06/08
-
- 和書
- わかりやすい鍛造加工